一戸建ての家づくりでは、建物だけでなく、道路や近隣の敷地と自宅の境界となる「外構」についても十分検討が必要です。外構の代表的なものとして「オープン外構」がありますが、今記事では、どのような特徴やメリットとデメリット、さらに、オープン外構の良さも活かしつつ、デメリットを補うセミクローズ外構にした場合の施工事例もご紹介いたします。
目次
オープン外構とは?
オープン外構とはフェンスや塀で仕切られていない外構のこと

オープン外構とは、敷地の周囲をフェンスや塀で明確に仕切らない外構デザインを指します。このため、道路や他の敷地から比較的自由に出入りできる開放的な設計が特徴で、人が簡単にまたげるような低い仕切りの場合もオープン外構に含まれることがあります。
オープン外構をおすすめするケース
オープン外構は、どのような家づくりをしたいときにおすすめなのか、主な3つのケースをご紹介します。
外構の費用をなるべくかけたくない

オープン外構は、外構の費用をなるべくかけたくない場合に検討することが多いようです。フェンスや塀の設置費用がかからないため、クローズド外構と比較して大幅に節約でき、フェンスや塀の設置費用分を建物自体や内外装、室内設備などに使うことができます。
近隣と家族ぐるみのお付き合いをしたい

家族ぐるみの近所づきあいがある場合も、オープン外構がおすすめです。フェンスや塀がないことで、目が触れ合う機会が増えて、近隣の方とのコミュニケーションがしやすくなり、親だけではなく、子供たちも気軽に出入りすることができます。
ガーデニングをアピールしたい

趣味のガーデニング。毎日のお手入れで季節の変化を楽しめます。オープン外構なら、そんな自宅でのガーデンニングライフを近隣や通行人の方にもお伝えする機会になります。また、美しい庭は近隣や街の美観の向上にも役立ちます。
オープン外構を選ぶ4つのメリット
オープン外構を選択した場合、次のような4つのメリットがあります。
開放感のある庭になる

オープン外構の特徴は、見た目がすっきりしていること。庭が小さくても見通しが良くなることで広々とした印象になります。ガーデニングを趣味にしている方なら、自慢の庭を近隣や通行人にアピールすることもできます。
近所の方も気軽に話しかけやすい

オープン外構はどこからでも自由に敷地に出入りできるので、近隣の方と接する機会が増え、家族ぐるみで、日常の何気ない会話を楽しんだり、近所づきあいが自然に生まれるでしょう。人づきあいが好きな方にとってはおすすめです。
また、仕切りのないオープン外構は一見不用心のように見えるかもしれませんが、実は、死角が少なく、侵入者は周りから丸見えになるというメリットもあります。近所付き合いが盛んな場合は、敷地内外に目を配る人が増えるため、防犯性が向上することがあります。
外構の工事費用を抑えられる

オープン外構なら、次のような費用はかかりません。
- 塀やフェンスそのものの材料費
- 塀やフェンスの設置費用
- 塀やフェンスの基礎部分を設置する費用
ケースバイケースですが、これらの費用はトータルで100万円を超えることもあります。オープン外構ならこういった費用は不要です。
風通しや日当たりが良くなる

オープン外構なら、外の風や光が敷地の中に自然に入ってきます。風通しや日当たりの良さは大きなメリット。洗濯物も良く乾き、家の中も湿気がたまりにくくなるので、カビなども生えにくくなるでしょう。
オープン外構を選ぶ3つのデメリット
一方で、オープン外構にも次のようなデメリットがあります。
誰でも敷地内への出入りが自由にできる

前項でもお伝えしたように、オープン外構はフェンスや塀がないため自由に敷地へ出入りできる状態です。万一の場合、悪意を持った不審者によって、以下のリスクが生じる可能性があります。
- 敷地に侵入され、いたずらをされる
- 犬の散歩道として使われ、排泄物を放置される
- 自動車や自転車、置き配の荷物を持ち去られる
- 車の方向転換やショートカットに使われたり、無断で駐車される
- 角地などで、通行人の近道として利用されて庭が踏み固められる
こうしたリスクが考えられるため、オープン外構を選択しない方もいます。
外から庭やテラスが丸見えになってしまう

オープン外構にすると、外から庭が丸見えになります。
- テラスや縁側でくつろいでいる
- ペットや子どもを遊ばせている
- 洗濯物を干す
といった様子が外から見えると、家族にとっては抵抗があり、くつろげないこともあります。プライバシーを重視する方には、オープン外構はおすすめできません。
庭をきれいに保たなければならない

オープン外構は、美しい庭をアピールできることがメリットのひとつですが、逆に言うと、外から庭が見えてしまうために、次のような状態にならないように庭を定期的にメンテナンスする必要があります。
- 庭のあちこちに背の高い雑草が生えている
- 落ちた葉や枝、ごみを掃除していない
- 植木鉢が倒れたまま
見られても恥ずかしくない庭にするためには、こまめに掃除する必要があるでしょう。庭仕事が面倒と思う方には、オープン外構はあまり向いていません。
オープン外構の良さも活かしつつ、デメリットを補うセミクロースド外構の施工事例
オープン外構は、敷地の境界をあまり仕切らず、開放的で視覚的な広がりを持たせる設計です。その特徴として、周囲との調和や敷地全体の見通しの良さが挙げられますが、プライバシーや防犯面でのデメリットもあります。
そのデメリットを補うために、敷地の全てをフェンスや塀で囲う下の写真のような「クローズド外構」にしてしまうと、門などの決められた場所からしか敷地に入ることができないので、プライバシーや防犯面での安心はありますが、周囲との調和や敷地全体の見通しの良さは消えてしまいます。

しかし、隠したい部分は隠しつつ、出入りのしやすさにも考慮した「セミクローズド外構」ですと、敷地の一部がフェンスや塀で仕切る設計になるため、建物周囲との調和や敷地全体の見通しの良さとプライバシーや防犯面のバランスを取ることができます。
以下、YKK APの製品を使用したセミクロースド外構の例を紹介いたします。
照明は足元を中心に、草花やフェンスをより美しく見せつつ道路から家の中へと誘うように配置


足もとの草花を照らす照明が家の中へと優しく誘う、セミクローズド外構の施工例です。(YKK AP エクステリア スタイル大賞2021年ガーデン部門シルバースタイル賞/採用製品:シャローネフェンス/設計施工:株式会社 トータルエクステリア盛岡)
オープン外構の一部を目隠しで仕切り、その中に「リウッドデッキ」を設置


オープン外構のよさを活かしつつ、目隠しを囲むように設置することで、「はなれ」のようなアウトドアリビングを生み出した施工事例(YKK AP エクステリア スタイル大賞2023年分譲街並み&ビル・商業施設部門ゴールドスタイル賞 採用商品:リレーリア フロントフレーム/ルシアス 宅配ポスト/リウッドデッキ 200/ ポラスタウン開発 株式会社)
外部からの視線が気になりそうなポイントごとにフェンスや植栽をレイアウト

外部からの視線が気になりそうなポイントごとにフェンスや植栽をレイアウト。オープン外構ならではの明るさや解放感を損ねることなく、さりげなく目隠しをしています。(YKK AP エクステリア スタイル大賞2022年分譲街並み・公共施設部門シルバースタイル賞/採用商品:リウッドデッキ200/設計施工:株式会社 ウィル)
フレームや装飾パネル、カーポートを組み合わせる


オープン外構で気になる道路境界も、床の目地の入れ方や異なる素材での貼り分けによって、敷地の内外をきっちりとゾーニング。明るく開放的でありながら安心感があるエントランスになっています。(YKK AP エクステリア スタイル大賞2022年ファサード部門ベストスタイル賞/採用商品:リレーリア フロントフレーム・シンプレオ門扉・シンプレオフェンス・イーネットフェンス・レオンポートneoシリーズ/設計施工:株式会社 little bear garden)
木目化粧ブロック、ウォール、フレームをレイアウト。その前後に植栽を重ねる

オープン外構の住まいに、木目化粧ブロック、ウォール、フレームを、それぞれ高さを変えてレイアウト。その前後に植栽を重ねることで、立体感のある軽やかなファサードになっています(YKK AP エクステリア スタイル大賞2020年リフォーム・リノベーション部門ブロンズスタイル賞/採用商品:リレーリアフロントフレーム・エクステリアポスト・ルシアスフェンス/設計施工:株式会社 叶屋)
自宅や近隣の環境も踏まえて、外構を考えましょう。

オープン外構は、フェンスや塀の設置が不要で、開放的な家づくりを実現します。近所づきあいが活発になりやすい反面、外からの見通しが良いことで、庭の手入れやプライバシー保護のための配慮が必要です。
見通しが良く死角がないので不審者は入ってきにくいという面もありますが、近隣も含めて人の目が少なくなる深夜などには、不審者が侵入しやすくなるというデメリットもあります。
オープン外構は、メリットもデメリットもあるので、家族の要望や自宅の立地、庭や玄関、カーポートなどとの関係、近隣の環境も踏まえて、どのような外構にするかを決めましょう。