オープン外構の家は、広々とした開放感があります。しかし道路から家の中が丸見えになってしまう、庭に気軽に出られない、防犯上に問題があるといった悩みやトラブルも。今回は、おしゃれでさりげないスクリーンやフェンスを使った目隠しや境界線の工夫など、オープン外構の悩みを解決するアイデアをご紹介します。
目次
開放感がある人気のオープン外構の家、暮らしにくい悩みやトラブルがあることも
オープン外構とは、門扉やフェンスを最小限にして、外から庭が見えるようにしたデザインのことを言います。道路から直接芝生やデッキへとつながっている開放的な庭をご覧になったことがある方も多いことでしょう。欧米では、このような外観スタイルが良く見られ、最近では、日本でも人気があります。
敷地を高い塀で囲んでしまうと、何となく狭苦しい感じがしますし、日差しや風を遮るので湿気も気になります。オープン外構の家なら日当たりも風通しもよく、視線が抜けるので広々とした明るい住まいになります。
しかしこのオープン外構の家でよく聞く悩みが、周囲から丸見えになってしまうため落ち着かないというものです。広々としたデザインに憧れてオープン外構にしたものの、家の中が見えてしまうのでいつもカーテンを閉めている、人目につくので気軽に庭に出られない、さらには庭に出る前にはいつも着替えをしている、目隠しが欲しいという声もあります。
また、防犯上の不安もあります。道路との境界線がはっきりしないため、敷地内に知らない人が勝手に足を踏み入れてきて怖い思いをしたりトラブルになったりするケースも。
快適に暮らすためには、建物と外構をバランスよく整えることが大切です。例えば、大きな窓がある開放的な設計の家で、外構も開放的にすると、プライバシーを守るのが難しくなります。とはいえ、高い塀で囲んで完全に目隠してしまうと、暗くなったり、庭が狭く感じられるようになったりしてしまいます。
特に日本の住宅は、南面に大きな窓を取り付けて開放的な家づくりをすることが多いため、南面道路の土地でオープン外構にすると、このような悩みやトラブルが生まれやすいのです。
外構デザイン3つのスタイル、オープン外構の家のメリットとデメリット
オープン外構の悩みを解決するにあたって、まずは日本でよく見られる外構デザイン3つのスタイルと、それぞれのメリットとデメリットを改めて整理してみましょう。
オープンスタイルの外構
庭や建物を見せるデザインの外構です。視線が抜けるよう、フェンスや門扉を小さく計画します。
オープン外構の家のメリットは、何と言ってもその開放感にあります。風通しや日当たりがいいのはもちろんのこと、土地を広く感じさせる効果が大きいので、狭小地の分譲住宅でもオープン外構の家が多く見られます。
道路から続く庭は、まるでアメリカの邸宅のよう。自慢の庭の花々をご近所の人に見てもらうことができるなど、近隣とのコミュニケーションが取りやすいのも、オープン外構の特長のひとつです。
また意外に思われるかもしれませんが、オープン外構の家は空き巣に狙われにくいと言われています。空き巣は隠れて作業をしたいため、身体が隠れる塀がある家を好むからです。
一方、オープン外構の家のデメリットは、プライバシーを守りにくいところです。加えて、道路からの境界があいまいなため、通行人が多い地域では敷地内に勝手に自転車を停められてしまいトラブルになったケースも。地域と一体化したデザインならではの悩みです。
クローズドスタイルの外構
プライバシーをしっかり守るデザインの外構です。高いフェンスや門扉を使いしっかり目隠しをして、道路からの視線を遮るように計画します。メリットはご近所の目を気にすることなく安心して暮らせること、デメリットは日当たりや風通しが悪くなりがちで、死角が多いので空き巣への不安があります。
セミクローズドスタイルの外構
オープンスタイルとクローズドスタイルのいいとこどりのスタイルの外構です。さりげなく視線を遮りつつ、プライバシーも守れるよう計画します。
見せながら隠すセミクローズドスタイルへ、おしゃれでさりげないスクリーンやフェンス
オープン外構にはたくさんのメリットがあります。そのメリットを活かしつつ、悩みやトラブルを解決してくれるのが、オープンとクローズドのメリットを兼ね備えたセミクローズドスタイルの外構です。
現在のオープンスタイルの外構に、さりげないスクリーンやフェンスを付け加えれば、風通しも日当たりもよく、開放感はそのままに、でもプライバシーはしっかりと守ってくれるセミクローズドスタイルの外構になります。
それではセミクローズドスタイルの外構を作る、おしゃれで便利なフェンスやスクリーンをいくつかご紹介しましょう。
まずは玄関まわりです。こちらの写真はオープン外構のイメージを損なわずに、さりげなく境界線を作ってくれるデザイン性の高い斜め格子です。
斜め格子は、5°、10°に傾いた格子を自由に組み合わせることができるので、我が家ならではのオリジナルなデザインが作れます。エントランス部分は家の顔です。デザイン性と品質にこだわるのが、住まい全体のグレード感をアップさせるコツです。
こちらはたて格子で構成されたスクリーンタイプのフェンスです。視線が気になるところに立てればさりげない目隠しになります。たて格子は0~90°の角度で1本ずつ取り付けできるので、見せたいところと隠したいところのメリハリをつけることができます。
フェンスは格子状のデザインを選べば、境界線をはっきりさせつつ、ほどほどに目隠しをしてくれます。これなら開放感を損ねることなく、でも外からの視線を気にする必要が無いので、安心して庭に出ることができるようになりますね。
セミオープンスタイルの外構なら、オープン外構のいいところを残しつつ、これまでの悩みも解決してくれます。それぞれのスタイルのメリットとデメリットを知って、心からくつろげる家と庭を目指してくださいね。
著者プロフィール
Yuu(尾間紫)
一級建築士/インテリアプランナー/インテリアコーディネーター/マンションリフォームマネジャー
長年リフォーム業界の第一線で、数多くの住宅リフォームの相談、プラン設計、工事に携わってきた経験から、本当に価値あるリフォームについて皆さまにお話します。過去を繕うものではなく、未来の暮らしを創る「リライフのリフォーム」を提唱。実践的なリフォームのノウハウを、テレビや雑誌、新聞連載、講演などを通して発信中です。著書に『リフォームはこうしてやりなさい(ダイヤモンド社)』など。Webサイト「リフォームのホント・裏話」(http://www.ne.jp/asahi/net/rehome/)でリフォームの実践的なノウハウを公開中