小さな庭や細長い庭では、大きな樹木を植えることが難しい。庭全体に枝が伸びると樹木は隣地境界や道路境界を超えて大きく枝を伸ばし、通路すら確保することが出来なくなります。住宅地の庭では大きな樹木を自由に植えることが出来ないことも多いのですが、緑は部屋の中からも見えて欲しいし、身長より高い位置で揺れる景色も見ていたい。グランドカバー や下草だけでは素敵な景色を作ることは難しいですね。
限られた空間での素敵な雰囲気を作りには、小スペースで背を高くすることも横に広げることも自在にコントロールができるつる性の植物が欠かせません。フェンスやゲート・アーチなどを利用して植物を誘引すると頭上で揺れたり、日陰を作る緑の景色を作ることが出来ます。今回は、おすすめのつる性植物をご紹介します。
1.落葉と常緑のどちらかを選ぶ
つる性植物には落葉性と常緑性のものがあります。花や葉の色や形で選ぶよりも先に、まずは冬には落葉して葉が無くなるものか、一年中緑が保たれる常緑のものにするのかを選びます。
落葉性の良いところは、暑い夏は日陰をつくり、寒い冬は暖かい日差しが届くこと。一年を通して変化が大きく季節感を感じるのは断然、落葉性です。
常緑性は、視線を遮り目隠しの役目を果たしてくれます。隣地の二階など高いところからの視線コントロールも可能です。一年を通して緑で空間を彩ってくれるのも魅力です。
2.植える場所、誘引する場所の日照条件を考えて選ぶ
植物を健やかに育てるコツは、育てる環境に適した種類の植物を選ぶことです。住宅地では周囲の建物の影が落ちるので、真夏以外の季節は南庭でも日陰が出来ます。東西南北の方位確認だけでは不十分なのです。加えてつる性植物は、根元の土の部分とつるが伸びていく場所が離れることもあって日当たりに違いが出てきます。葉が茂り光合成をする部分の日照条件の確認も忘れないでください。日陰が好きな植物を日向に植えると、夏の強い日差しに耐えられず葉が焼けて枯れてしまうことがあります。また日向が好きな植物を日陰に植えると、日差し不足で成長できず、生き生きとした姿を見ることが出来なくなります。
塀やフェンスの影も要チェックです。
3.「華やかに彩る」つる性植物4選
モッコウバラ
毎年、ゴールデンウィーク頃に満開を迎えるモッコウバラ。のはずなのですが、ここ2年ほど開花が早くなっています。気温の上昇と共に植物の開花時期も変化してきているのを感じています。モッコウバラの花には黄色と白があります。黄色は元気な雰囲気で満開時は華やかになります。白色は少し控えめで派手さは少ないのでエレガント系の庭やシックな庭にオススメです。
常緑性なので冬でも葉が残っています。落葉樹ばかりで冬には寂しくなる庭では重宝します。日向から日照時間が短い場所でも生育可能です。
フジ
開花は4月中旬ごろから。まだ花の少ない時期の開花でボリュームのある紫色、目を引く花です。5月の上旬に花殻を摘み取ってスッキリさせます。こちらも近年は開花が早く4月の初めには咲いてしまいます。花の蜜を求めて色々な蜂がやってきますが、早く咲きすぎると虫の成長とのタイミングがズレるのか、今年は蜂がとても少なかったです。日向の環境が得意です。
フジは落葉樹です。夏の日差しコントロールにも適しています。窓沿いにパーゴラを作って軒の代わりに設えるのもオススメです。冬は日差しがしっかり室内に届き、春先には窓前を藤の花が彩ります。次第に開花していく花を毎日眺められるのも幸せな時間になりますよ。
カロライナジャスミン・ハゴロモジャスミン
春に花咲くジャスミン。フェンスに誘引してジャスミンウォールを作っているお家も見かけます。カロライナジャスミンは黄色い花、ハゴロモジャスミンは白い花を咲かせます。どちらも花をたくさんつけて見応えがあります。
常緑性なのでメッシュフェンスなどの視線が通るところに誘引すると、目隠し効果が生まれて良いですね。日向から半日陰で生育可能です。
ノウゼンカヅラ
7月〜8月、夏に開花するノウゼンカヅラ。華やかな色は南国っぽさがあります。花が少なくなる真夏に庭を彩ってくれるのが魅力です。
落葉性なので、冬には日差しが欲しい場所に適しています。冬の目隠し効果は低くなります。日向から半日陰まで生育可能ですが、日差しが似合う色ですね。
4.「しっとり品良く大人雰囲気」のつる性植物4選
ナツユキカヅラ
夏に白い小さな花をたくさん咲かせるのでナツユキカズラという名前で呼ばれるようになりました。群生する花はフワフワと柔らかい雰囲気です。
生育が早いので、苗を植えてから2年くらいでゲートやアーチを登り頭上で素晴らしい景色を作ってくれるはずです。秋は紅葉した姿も楽しめる落葉性です。日向環境が得意な植物ですが少し日照条件が悪くても大丈夫です。
ヤマホロシ(ツルハナナス)
ナスの花に似ているからツルハナナスとも呼ばれています。春から秋までパラパラと花を咲かせ続け、開花当初は紫色で次第に白へと変化していきます。和の庭にも似合います。半常緑性で半日陰でも生育可能です。
フウセンカヅラ
夏の日差しを防ぐために季節限定のグリーンカーテンを作りたい。そんな場所には「一年草」と呼ばれる、毎年、種から育てる種類もオススメです。フウセンカズラの花は小さくて目立たないのですが、その後にできる紙風船のように膨らんだ果実が素敵です。とても涼しげでもあります。ツルを巻きつけて自分でフェンスに絡まって広がります。
種取りをして、翌年、その種を撒けば苗を購入しなくても自家製のフウセンカヅラを毎年、楽しむことができます。
タイワンソケイ
アロマオイルの「ジャスミン」はタイワンソケイから抽出されています。夏から秋まで順に花を咲かせます。花自体に派手さはなく、どちらかといえば地味なので香りで開花に気づくことも多いのではないでしょうか。
常緑性で旺盛に成長します。目隠しの必要なところに誘引して広げるのもオススメです。
今回は8種類のつる性植物をご紹介しました。まずは庭の中で、どこに植えてどんなふうにツルを誘引していきたいのか想像を巡らせてみてください。苗を植えて成長を見ながら広げていく過程や次第に花つきが良くなってくる様子を見ながら育てていると愛着も強くなってきます。3〜4年後の最初の想像に近い景色が見えてくる日を楽しみに。
著者プロフィール
冨田ちなみ Gokansha(ゴカンシャ)
個人住宅の庭・外構や店舗のエントランスガーデンなど、あなたのライフスタイルに調和する外空間のデザインするGokansha(ゴカンシャ)代表。二級建築士、インテリアコーディネーター、二級造園施工管理技士、福祉住環境コーディネーター、園芸療法リーダー二級、ハーブコーディネーターなど様々な資格を持ち、建築士でもあるため住宅目線・エクステリア目線・ガーデン目線、それぞれの記事を発信いたします。E&Gアカデミー講師。