「何を植えても上手く育てられない。私には植物を育てる才能がないのかも」そんなふうに思ったことはありませんか?庭を作る仕事をしていると伝えると、よく返される言葉なのです。
植物を育てるのに才能なんて必要ない。上手く育てられないのは植物の選択を間違っているから。植物は生き物なので、それぞれ性質が違って元気に育つ環境も違います。育てる環境を観察して、その環境が得意な植物を選ぶことがコツです。
環境ってどんなこと?
育てる場所の何を観察すれば良いのか。ポイントは2点あります。
1.日照条件
日当たりの良い場所なのか、日が当たらない場所なのか、大きな木の木陰になる場所なのか。1日の中で日の当たる時間はどれくらいの長さなのか。これによって、ひなた・日陰・半日陰 のどれに当たるのかを見極めます。
2.土の乾湿
いつも土が湿っている状態なのか、いつも乾いた状態なのか。他の場所より湿っているか乾いているかを見比べて、Dry(ドライ)・Wet(ウェット) の状態を見極めます。
この2点を見極めて、その環境が得意な植物を選べば元気に育ってくれるはずです。今回は、建物の影になったり、常緑樹の影になったりと 日陰 の玄関周りに適した植物をご紹介します。
日陰植物でつくる花壇
日陰の植物は華やかな花よりも葉の美しさが魅力です。日陰の場所は暗い印象になりがちなので、斑入り葉や明るいグリーンの大きな葉を取り入れて明るく演出します。しっとりと落ち着いた大人っぽい雰囲気が作れたり、モダンな雰囲気を作れたり、足元に砂利を敷いてスッキリした印象にしたり、日陰でも魅力的な花壇を作ることができます。
日陰のシンボルツリー
緑のある玄関まわりは、街並みの一部。ひとつひとつの玄関が繋がって街並みになっています。北向きの日陰の玄関でも、緑を取り入れて美しい街並みの一部にして欲しいなと思います。緑のある玄関まわりは豊かさも感じさせてくれます。日陰のシンボルツリーには、ぐんぐん成長して高木になって、たっぷり日差しを浴びている種類よりも森の中では高木の木陰を居場所にしているものが適しています。
花が魅力のシンボルツリー「ハイノキ」
冬でも葉を残す常緑樹は一年を通して緑を保ってくれて、玄関扉を開けたときに見える室内を優しく目隠しする役割を持たせることができます。機能的な役割も果たしてくれるのは嬉しいですね。春先には可愛い白い花を咲かせます。常緑樹のシンボルツリーで美しい花を咲かせる種類は少ないので貴重な存在でもあります。日陰が得意な樹木なので日当たりに植えると枯れてしまうことも。成長がゆっくりで住宅の周りに植える樹木としては魅力です。
冬が魅力のシンボルツリー「ソヨゴ」
こちらも常緑樹です。花は目立たないのですが、寒く花の少ない冬に赤い実をつけて庭に彩りをもたらしてくれます。雌雄異株なので実を楽しむには「雌木」を選んでください。ソヨゴも成長はゆっくりです。
日陰の低木
次はシンボルツリーの足元に植える植物たちです。花壇植栽の基本的なデザインは、高木+低木+下草 と高さを変えたものを立体的にレイアウトします。そうすることでボリュームや変化のある自然な景色を作ることができます。
モダンな雰囲気も作れる「ヤツデ」
大きな葉がモダンな雰囲気づくりに使える植物です。アジアンリゾート風の空間にも似合うし、和モダンにもぴったりです。葉に白い模様が入った斑入り種を選べば暗い日陰を明るく見せてくれます。冬に白くて丸い花を咲かせてくれるのも嬉しい。寒い季節に貴重な花です。
テーブルコーデに使える「ナンテン」
庭の隅に植えられることが多く、なかなか主役にはしてもらえない存在なのですが、冬にたわわに実る赤い実がとっても魅力的です。ナンテンの葉には抗菌作用があります。料理の盛り付けにテーブルセッティング に活用して欲しい植物です。
日陰の灌木・下草
花壇では土が見えないように下草で覆うか、砂利やウッドチップ、バーグを敷き詰めます。そうする事で雑草が生えにくくなるので常に美しく保つことができ、手入れの手間を省くことができます。シンボルツリーの足元にバランスよく下草が植えられていると一気にガーデニング上手に見えますね。
正月飾りの人気者「センリョウ」
花の卸市場では年末に「千両市(センリョウイチ)」があります。センリョウだけが取引される日。毎年12月の中頃にあって、この日以降に街の花屋さんの店先に「センリョウ」が並びます。お正月に向けて「センリョウ」の需要が多いことがわかる、とても丈夫な植物なので一家にひとつ育てていると便利です。
冬の終わりに花が嬉しい「クリスマスローズ」
ほんの少し春の気配を感じる、でもまだまだ寒い・・・そんな時期に花を咲かせる「クリスマスローズ」は春の到来を知らせてくれる存在です。とても人気の植物で花の季節にはガーデンショップの店先は「クリスマスローズ」でいっぱいです。たくさんの品種があるのでお気に入りの花を探すのも楽しく、常緑で一年を通して地面を覆ってくれます。
細い葉がアクセントになる「斑入りヤブラン」
シュッとした葉を生かして花壇でのアクセント使いがおすすめ。写真は斑入り種ですがグリーン単色の種類もあります。夏の終わりに咲く紫の花を見つけると暑い毎日もそろそろ終わりだな〜とホッとします。
食べることもできる「ユキノシタ」
昔から天ぷらにして食べられてきました。「虎耳草」と呼ばれる漢方薬でもあります。体に良さそうですね。私は保湿効果があると聞いて自家製化粧水の材料にしています。春に咲く花は、よく見るととっても個性的な姿です。ぜひじっくり見てください。地面を覆うように成長して広がって行きます。
日陰の玄関まわりを彩る植物をご紹介してきました。日陰が得意な植物の、ほんの一部です。ガーデンショップの苗には植物の特徴を記したタグがついています。花や葉の美しさに惹かれたら、そのタグを見て植えたい場所で元気に育ってくれそうか確認してください。それだけで枯らしてしまう事が減るはずです。植物を育てる事が難しそうな日陰ですが、日陰だからこそ育てられる植物、日陰だから作れる雰囲気をぜひ楽しんでください。
著者プロフィール
冨田ちなみ Gokansha(ゴカンシャ)
個人住宅の庭・外構や店舗のエントランスガーデンなど、あなたのライフスタイルに調和する外空間のデザインするGokansha(ゴカンシャ)代表。二級建築士、インテリアコーディネーター、二級造園施工管理技士、福祉住環境コーディネーター、園芸療法リーダー二級、ハーブコーディネーターなど様々な資格を持ち、建築士でもあるため住宅目線・エクステリア目線・ガーデン目線、それぞれの記事を発信いたします。E&Gアカデミー講師。