転落事故や熱中症など、子供の安全を脅かすリスクは、家の中にも潜んでいます。今回は、子供に配慮した「キッズデザイン賞」の受賞作品から、安全性と快適性を両立させた庭づくりや窓まわりの工夫をご紹介。家族みんなが安心して暮らせる住まいづくりのヒントをお届けします。
目次
子供の事故を防ぐ!安全な家づくりに役立つ「キッズデザイン賞」とは?

交通事故を除く、子供の不慮の事故の発生場所は家庭内が大半となっています。
こども家庭庁の調査(※1)によると、交通事故を除く子供の「不慮の事故」の大半は家庭で発生し、転倒・転落、墜落、不慮の溺死及び溺水、不慮の窒息などが報告されています。
一見安全そうに見えるわが家の中にも、子供にとって予期せぬ危険が潜んでいます。例えば、建物からの転落事故の多くは、家庭内で発生。窓枠に座ったり、網戸に寄りかかったりといった何気ない行動が重大な事故につながることもあります。
子供が安全に過ごせる家にするためには、転倒や転落を防ぐための窓まわりや庭づくりの工夫、水まわりではチャイルドロックを取り付けて近づけないようにするなどの対策が必要です。さらに、夏場の熱中症対策や、防犯にも気を配ることが、子供の安全のためには欠かせません。
今回ご紹介するのは、子供の安全性を高め、安心の暮らしを支えてくれる製品が数多く選出されている「キッズデザイン賞」を受賞した、エクステリアや窓周りの製品です。
キッズデザイン賞とは、子供や子供の産み育てに配慮した製品・サービス・空間・活動・研究などを表彰する制度です。上手に取り入れれば、子供の安全はもちろん、見守る大人たちにとっても快適で安心な住まいになることでしょう。
※1「こどもの不慮の事故の発生傾向と対策等」こども家庭庁成育局安全対策課 令和6年3月26日こどもの事故防止に関する関係府省庁連絡会議より)
転落事故を防ぐ!ベランダ・バルコニーや窓まわりの安全対策

子供が足を掛けにくく乗り出せない寸法で設計、よじ登りへの配慮がされた「ルシアスバルコニー」(YKK AP)
こども家庭庁の調査(※1)によると、子供の建物からの転落事故は、1歳から14歳まで幅広い年齢で発生しています。
事故の状況は、窓枠に座る、網戸に寄りかかる、窓が開いていた、ものを取ろうとして足場に登る、見送り・外を見ていた、窓やベランダ、バルコニーの柵で遊んでいたなどがあげられています。また換気のために開けておいた窓から落下したケースも報告されています。
転落事故を防ぐ対策としては、まずは子供が勝手に窓を開けたり、ベランダやバルコニーに出たりしないようにすることが重要です。こども家庭庁では手の届かない位置に補助鍵を付けることや、窓や手すりの近くに足場になる家具などを置かないよう推奨しています。
また、一戸建てでベランダやバルコニーがある場合には、転落防止の観点から安全性の高いフェンスを選ぶことも重要です。

子どもの安全に配慮した「ルシアスバルコニー」。キッズデザイン賞 子どもたちの安全・安心に貢献するデザイン部門を受賞(YKK AP)
こちらは「ルシアスバルコニー」、キッズデザイン賞 子どもたちの安全・安心に貢献するデザイン部門を受賞した製品です。
バルコニーフェンスのスキマを小さくすることで、子供が足を掛けにくい工夫がされています。また、手すりを内側に傾けることで、物を家に置きにくい構造になっていますので、手すりの上に物を並べて遊ぶのを防ぎつつ、もし置いたとしても物が内側に落ち、事故を防ぎやすくなります。
ベランダやバルコニーを設置する際には、こういったフェンスの構造にも注目すると、子供にとって安全性が高い空間づくりをすることができます。

ひとつの窓で2つの開閉方式を組み合わせた「APW430 ツーアクション窓」。内倒しで開いている様子。キッズデザイン賞 子どもたちの安全・安心に貢献するデザイン部門を受賞(YKK AP)

こちらは、「APW430 ツーアクション窓」。内開きにしている様子。
キッズデザイン賞 子どもたちの安全・安心に貢献するデザイン部門を受賞(YKK AP)
安全性の高い窓もあります。こちらは、ひとつの窓で2つの開閉方式を組み合わせた「APW430 ツーアクション窓」、キッズデザイン賞 子どもたちの安全・安心に貢献するデザイン部門を受賞した製品です。
ツーアクション窓とは、1つの窓で、「内開き」と「内倒し」の2通りの開き方ができる窓のことです。換気をしたい時は、「内倒し」にしておけば、子供が身を乗り出しにくくなるので転落事故を防ぎつつ、防犯にも役立ちます。
このようなツーアクション窓は、ドイツではドレーキップ窓として普及しています。安全性や防犯性に加えて、断熱性、気密性にも優れ、また使い勝手がいいので、上手に取り入れればより便利で快適な住まいになることでしょう。
熱中症リスクを下げる!庭やベランダの日よけ対策

強い日差しを窓の外でカットして室内の温度上昇を抑える日よけ「洋風すだれ アウターシェード」。キッズデザイン賞 子どもたちの安全・安心に貢献するデザイン部門を受賞(YKK AP)
温暖化やヒートアイランド現象などにより、夏の暑さ対策が欠かせない時代です。総務省の調査(※2)によると、熱中症の発生場所で圧倒的に多いのは住居となっています。
特に、子供は大人よりも体に熱がこもりやすく、また照り返しの影響を受けやすいので注意が必要です。暑い室内で夢中で遊んでいるうちに、熱中症になってしまうといったことも少なくありません。
エアコンをつけていても、窓に直射日光が当たると室温が上がりやすくなり、照り返しの熱によって体感温度も上がります。
室内の熱中症対策のポイントは、窓の外側に日よけを取り付けて直射日光を遮ること、また窓の断
熱性能を向上させて熱の侵入を防ぐことも効果的です。

テラス屋根「プレーンルーフテラス」に「洋風すだれ アウターシェード」を組み合わせて日陰にすれば、室内を涼しく保ちやすくなります(YKK AP)
こちらは「洋風すだれ アウターシェード」、キッズデザイン賞 子どもたちの安全・安心に貢献するデザイン部門を受賞した、窓の外に取り付ける屋外型の日よけです。
「洋風すだれ アウターシェード」は、強い夏の日差しを窓の外で6~8割以上カットし、室内温度の上昇を抑えます。使わない時は、ロールスクリーンのように、くるくると巻き取って収納できるので、見た目もすっきり。機能性とデザイン性を兼ね備えた人気の製品です。

日よけで直射日光を遮りつつ、窓そのものの断熱性能を上げれば、更に室内を涼しく保ちやすくなります。こちらは内窓「ウチリモ プラマード U」(YKK AP)
更に快適にしたいなら、窓から入り込む外気の熱をしっかりと防ぐために効果的なのが、窓の断熱性能を向上させることです。
こちらは2025年7月発売の内窓「ウチリモ プラマード U」。今ある窓の内側に取り付ける樹脂製の内窓で、取り付けはとても簡単。1窓あたり60分ほどで工事は完了します。
内窓を取り付けると、窓の断熱性能が格段に向上し、夏涼しく、冬暖かく、とても快適に。エアコンの効きもよくなるので、光熱費の削減にもつながります。
(※2 総務省令和6年7月の熱中症による救急搬送状況/消防庁より)
安全な遊び場を作る!段差を解消するリウッドデッキやテラス囲い

安心しておうち時間を充実させることができる「ウチソト空間」パッケージ。キッズデザイン賞 子どもたちを産み育てやすいデザイン部門を受賞。こちらは「ソラリア テラス囲い 木調ガーデンルームタイプ」(YKK AP)
子供たちにとって安心・安全な遊び場を確保するのもなかなか難しい時代です。そこで、庭を有効活用し、子供たちが安全に楽しく遊べるスペースを作るアイデアが注目されています。
こちらは「ウチソト空間」パッケージ、キッズデザイン賞 子どもたちを産み育てやすいデザイン部門を受賞した製品です。
テラスやバルコニーに屋根や囲いを付ければ、わが家で自然を感じながら、子供が安全、安心に外遊びができるスペースができます。
さらに、室内の床の高さに合わせて「リウッドデッキ」を設置すれば、段差なく安全に出入りをすることができるように。小さな子供はもちろん、高齢者や妊娠中の方も安心して使えるアウトドア空間になります。
「ウチソト空間」は、他にも天気を気にしないで洗濯物を干せたり、大人がアウトドアリビングとしてくつろいだり。狭い庭でも工夫次第で、暮らしをより安全に便利に、そして豊かに過ごせる多目的スペースになります。
留守番中の子供の安全を守る!防犯性と利便性を高めた宅配ボックス

防犯性と出し入れの利便性を高めた「ピタットKeyシステム ルシアス宅配ボックス」。キッズデザイン賞 子どもたちの安全・安心に貢献するデザイン部門を受賞(YKK AP)
子供がひとりで留守番ができるようになると、気になるのが防犯面のこと。宅配ボックスがあれば、子供がひとりで留守番をしている時でも、ドアを開けて応対をすることなく荷物を受け取ることができるようになります。
こちらは「ピタットKeyシステム ルシアス宅配ボックス」、キッズデザイン賞 子どもたちの安全・安心に貢献するデザイン部門を受賞した製品です。
「ピタットKeyシステム ルシアス宅配ボックス」は、玄関ドア(※3)と同じ鍵で開けることができ、万が一、中に子供が閉じ込められても、簡単に脱出しやすい設計になっています。
近年、ネット通販の普及や共働き家庭の増加で、宅配ボックスの必要性が高まっています。子供の在宅時の安全を守るためにも、また大人が応対する際にも、宅配ボックスがあれば住まいの防犯性能は高まることでしょう。
※3 YKK AP製の玄関ドア「スマートコントロールキー」と同じ「ピタットKey(タグキー)」で宅配ボックスの解錠が可能です。
家庭内には、子供にとって思わぬ危険が潜んでいることがあります。今回ご紹介した「キッズデザイン賞」の受賞製品を参考に、子供に安全な庭づくりや窓まわりの工夫をしてみてくださいね。
ご紹介したキッズデザイン賞の受賞「YKK AP商品」はこちら
著者プロフィール

Yuu(尾間紫)
一級建築士/インテリアプランナー/インテリアコーディネーター/マンションリフォームマネジャー
長年リフォーム業界の第一線で、数多くの住宅リフォームの相談、プラン設計、工事に携わってきた経験から、本当に価値あるリフォームについて皆さまにお話します。過去を繕うものではなく、未来の暮らしを創る「リライフのリフォーム」を提唱。実践的なリフォームのノウハウを、テレビや雑誌、新聞連載、講演などを通して発信中です。著書に『リフォームはこうしてやりなさい(ダイヤモンド社)』など。Webサイト「リフォームのホント・裏話」(http://www.ne.jp/asahi/net/rehome/)でリフォームの実践的なノウハウを公開中