お庭の工夫で、夏を涼しく過ごす方法。テラス空間の利用で冷暖房効率のアップも。

お庭の工夫で、夏を涼しく過ごす方法

じめじめとした梅雨があけたら、もう夏本番です。室内での熱中症予防の観点からもエアコンの利用が推奨されていますが、家族みんなにちょうど良いコンディションをキープするのは、かなり難易度が高いですよね。エアコン以外にも室内の暑さをやわらげる方法を知っていれば、それぞれをうまく併用することで、家族全員が快適に過ごすことができますよ。
今回は、お庭の工夫で、暑い夏を少しでも涼しく過ごせる方法をご紹介します。

1.樹木を植える

お庭の工夫で、夏を涼しく過ごす方法。テラス空間の利用で冷暖房効率のアップも。

お庭の工夫で夏の暑さ軽減ということであれば、エクステリア・ガーデンに携わる者として、まずおすすめしたいのは「お庭に樹木を植える」です。

どんな猛暑日でも、樹木の生い茂る神社の境内に一歩足を踏み入れただけでひんやりと涼しく感じた経験がみなさんにもあると思います。樹木を植えると、私たちの頭上で葉が茂ることで強い日差しを遮り、過ごしやすい緑陰を作り出してくれるんです。

また、後の「グランドカバープランツを植える」でも詳しくご紹介しますが、植物には「蒸散」という現象があり、周囲の熱を奪ってくれる効果があります。暖かい空気が樹冠(頭上の枝葉が集まっている部分)に上昇したところで、植物の水蒸気が気化熱を奪い、上空の冷気が私たちのもとへ流れ込み、ひんやりと感じさせてくれるわけです。

もしも日差しの強さが気になる窓辺があったら、適度な木陰を作ってくれる株立ちの落葉樹を植えてみてください。落葉樹であれば、日差しが一番気になる夏場に枝葉が大きく繁り、日差しが落ち着く季節になれば葉を落としてくれますので、暗くなりすぎることがありません。年中気になる西日を遮りたい場合は、常緑樹を選ぶようにしましょう。

2.グランドカバープランツを植える

お庭の工夫で、夏を涼しく過ごす方法。テラス空間の利用で冷暖房効率のアップも。

グランドカバープランツとは、背丈が低く横に広がりやすい性質を持ち、地面を覆うように育つ植物のことをいいます。写真のような芝生を思い浮かべていただくと分かりやすいですね。

グランドカバープランツを取り入れることには、見た目の良さだけでなく、雑草取りや雨による泥はねの軽減など、様々なメリットがあるのは良く知られていますが、そのメリットにプラスして、地表温度の上昇を抑える効果もあるのです。

最近のエクステリアデザインにおいて、日々のメンテナンス軽減を重視するあまり、家の周りを全てコンクリートで覆ってしまうことも少なくありません。しかし、コンクリートには太陽の熱を吸収し、その熱を蓄積する性質があるため、真夏日の表面温度は60度を超えることもあるそうです。家の周囲が暑くなれば…そう、室内も暑くなって当然です。

コンクリートをやめてグランドカバープランツにすると、なぜ、地表温度の上昇が抑えられるのでしょうか。その理由は植物の「蒸散作用」にあります。植物は根から水を吸い上げ、葉裏の気孔から水分を放出する「蒸散」をおこなっています。その水分が蒸発する際に周囲の熱を奪ってくれているのです。夏場の打ち水を、植物たちは自然にやってくれて
いるのです。

ここからは、お庭に取り入れやすい、おすすめのグランドカバープランツを2種類ご紹介しましょう。

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クラピア

クラピアは、グランドカバープランツとして特別に品種改良された植物です。植えてから増えるまでのスピードが速く、芝生の約10倍の速度で広がります。また踏圧にも強いため、お庭の通路に近い場所でも植栽可能です。可憐な花も咲き、お手入れも1年に1~2回の刈り込みだけで良いというパーフェクトに近いグランドカバープランツです。日本芝同様に、冬場は茶色く枯れた状態となりますが、翌春にはまた緑の状態に戻りますので安心です。

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エリゲロン(ゲンペイコギク)

初夏から秋まで長く花を楽しむことができるエリゲロン。こぼれ種で繁殖し、地面を覆うようにどんどんと広がってくれます。草丈は30センチほどになりますので、人がよく歩く場所には向いていません。花壇の縁など部分的に地表面をカバーしたい場所に植えましょう。寒くなると地上部が弱ってきます。そうなったら短く刈り込んで冬越ししましょう。

3.後付け屋根やガーデンルームを設置する

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YKK AP「ソラリア」テラス囲い デッキ納まり

テラス空間にガーデンルームを設置することで室内が涼しく感じるということをご存じでしょうか。ガーデンルームの屋根を熱線遮断タイプの屋根にしたり、天井カーテンやロールスクリーンなどのオプション品で日差しを遮ることで、太陽の熱が窓から室内に直接進入するのを防ぎ、冷暖房効率のアップにつながります。

また、折りたたみ戸を開放することによるウインドキャッチ効果で、室内に多くの風を取り入れることができ、涼風を呼び込むこともできます。天井カーテンを付ければガーデンルームの内部温度が約マイナス5℃など、各メーカーの各商品によってシミュレーション結果がしっかりとカタログに掲載されているので、イメージが具体的に掴みやすいのもありがたいですよね。

ガーデンルームよりも手軽に快適さを手に入れたい場合は、後付け屋根も検討してみてください。最近の傾向として、日差しをある程度通すポリカ系の屋根ではなく、アルミ屋根材を採用したものが増加しています。

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YKK AP「プレーンルーフ」テラス

写真のようなアルミ屋根材は直射日光をしっかりと遮ってくれます。屋根下の温度上昇の抑制は元より、隣接する室内空間の快適性アップも可能です。

また、アルミ屋根材を採用することにより、軒天に木調色という選択肢が増えます。室内外の連続性が高まり、より居心地のよい外部空間の創出が可能となるわけです。暑さ軽減の為に取り付ける屋根とはいえ、デザイン性も重視したいのが本音ですよね。

4.シェードの活用

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YKK AP「アウターシェード」ひさし付け納まり

「日中だけ日差しを遮りたい」とか「夕方の西日が暑い」など、時間帯によって日差しをコントロールすることで暑さを軽減するには、屋外用のロールスクリーンが最適です。

上の写真の「アウターシェード」という商品なら、複層ガラスの窓に取り付けることによって、日射熱(太陽の光から発生する熱)を約66%以上カットしてくれます。

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日射熱のカット以外に、下記のような効果も期待できますよ。

  • 紫外線を約89%以上カット
  • 畳の日焼けを抑制
  • 家具・家電などの傷みを抑制

このような屋外用ロールスクリーンで窓を覆うと、眺望が悪くならないか心配になるかもしれません。「アウターシェード」の場合は、日射をしっかり防ぎながらも、室内からは外が見えやすいという生地タイプを選ぶことが可能です。

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先にご紹介した、ガーデンルームや後付け屋根は大掛かりだなぁと感じた方には、まずはこの屋外用ロールスクリーンで、日射熱の軽減された室内空間を実感していただくのがオススメです。

5.様々な選択肢を知っておくことが必要です

年々、過ごしにくく感じる日本の夏。
エアコン利用はもちろんのこと、衣服や寝具のセレクト、清涼感のあるドリンク、猛暑を乗り切るスタミナ料理などに加えて、今年の夏は、今回ご紹介した庭やテラス空間の上手な活用法も選択肢として考えてみてはいかかでしょうか。

 

著者プロフィール

お庭の工夫で、夏を涼しく過ごす方法。テラス空間の利用で冷暖房効率のアップも。

山岡由佳 クラスデザイン代表
二級造園施工管理技士、一級エクステリアプランナー

京都府立大学 人間環境学部 環境デザイン学科を卒業後、E&Gアカデミーにてエクステリアとガーデンを専門的に学ぶ。 エクステリアとお庭の専門店にて15年、ランドスケープデザイン設計事務所にて2年の実績と経験を積み、 2020年に独立し「cras design(クラスデザイン)」を設立。 個人宅向けの外構造園設計や施工店への作図サービスを中心にSNS運用サポートやブログ執筆サービスも行っており、 様々な視点から役立つ情報をお届けしています。

※記事内容は執筆時点のものであり、予告なく変更される場合があります。最新情報をご確認ください。