エントランスとは、入り口のこと。道路から住宅の玄関に向かって、敷地に入るあたりのことです。個人住宅のエントランスには、表札、インターホン、ポスト、宅配ボックスなどが必要です。それらを設置するために門柱や塀を配置します。どんな住まいにもエントランスは存在し、住まいの顔と呼べる場所。我が家らしさを演出したいですね。
エントランスデザインは、それ単体で考えるのではなく、背景にある建物と一体でデザインするという視点が大切です。先に建物が完成していたなら、そこにどう合わせて馴染ませていくのかをデザインします。チグハグにならずイメージ通りにまとまったエントランスにするには、必要な要素のひとつひとつを丁寧に選んでいくことになります。
今回は4種類の建物を例にコーディネートを考えていきます。スタートは建物のイメージを読み解くことから。モダン・ナチュラル・カジュアル・・・など、イメージを表現する言葉がありますが、どれかひとつの単語を当てはめるだけで建物を表現できるような単純な外観は、現在ではほとんどありません。モダン×ナチュラルだったりナチュラル×カジュアルだったり、二つ以上の要素を組み合わせたイメージを持つものが多いです。思いつくイメージを表現する単語を上げていくことから始めてみましょう。
Model.1
白い壁に明度コントラストの大きい扉の色とポーチタイルの色がモダンな印象。軒裏の木調が落ち着いたクラス感を演出しています。そして直線的なライン。これらの要素から前述のイメージを感じます。玄関ポーチのタイルが黒やグレーだったなら、もっと硬いイメージなるのですが、ブラウン系だから落ち着いた大人っぽさを感じさせます。
この建物とコーディネートするならエクステリアアイテムは「軽い印象」のものを選びます。重い存在感のあるものだと建物の垢抜け感を邪魔してしまいそうです。
抜け感のあるデザイン。線の細いデザインを意識して選ぶと良いでしょう。
Model.2
外壁が白い中に一部分、木調仕上げになっています。Model.1と同じくコントラストが大きい。こちらは明度、彩度共にコントラストが効いていてモダンです。ポーチタイルが黒いのでハードなカッコ良さを感じます。
この建物とコーディネートするならエクステリアアイテムは「重め」のものを選びます。ドンと揺るがない男前系でまとめていきましょう。
太めのデザイン、面で構成されたもの。木調と黒鉄部の組み合わせも似合います。
Model.3
特に和の要素が強いわけではないのですが、玄関扉の明度の低いブラウンと縦ライン、そして玄関ポーチのムラのある渋い色合いが和を感じさせている。50代後半以降の品の良いご夫婦が出てきそうな雰囲気です。玄関の庇部分が直線的なブラックで和よりもモダンさが強調されています。全体的には外壁の明るい色が中心なので軽やかです。
この建物とコーディネートするならエクステリアアイテムは「縦ライン」を意識して選びます。ダーク系の色で締めると落ち着いた雰囲気が出て良いのですが、ボリュームが大きくなりすぎると重くなり少しイメージがズレてきます。外壁と同じ白い壁か同系色のフェンスなどを使って抜け感を確保したいです。
玄関扉と同様の木調で縦ラインのものを中心に選びます。面積の大きくなる部分は、外壁に近い明るい色を選んで。
Model.4
木調が多用されているのでナチュラルなのですが、外壁の白と扉の明るいブラウンのコントラストで動きのあるカジュアルさが出ています。自然派の若いご家族がイメージされます。元気な雰囲気です。
この建物とコーディネートするならエクステリアアイテムは「木調+白」の組み合わせで。明度が低くならないように気をつけます。
明るい雰囲気を保つためには、軽やかさを意識して選びます。植栽との相性も良いイメージタイプです。
今回は、この建物だったら、どんなアイテムがコーディネートできるかを考えてみました。エントランスを考える時、いくつものカタログを開いて膨大にあるアイテムの中から選び出すのは、なかなかの重労働です。でも、最初に目指す方向が明確になっているとコーディネートできるものは、そんなに多くはないと言うことに気づきます。どちらかと言うと、イメージに合うものが無くて探し回るくらいです。
特別なことをしなくても、コーディネートがスッキリとまとまっていると、それだけで素敵に仕上がります。建物の魅力を読み解いて、我が家らしいエントランスをコーディネートしてくださいね。
著者プロフィール
冨田ちなみ Gokansha(ゴカンシャ)
個人住宅の庭・外構や店舗のエントランスガーデンなど、あなたのライフスタイルに調和する外空間のデザインするGokansha(ゴカンシャ)代表。二級建築士、インテリアコーディネーター、二級造園施工管理技士、福祉住環境コーディネーター、園芸療法リーダー二級、ハーブコーディネーターなど様々な資格を持ち、建築士でもあるため住宅目線・エクステリア目線・ガーデン目線、それぞれの記事を発信いたします。E&Gアカデミー講師。