道路から自分の敷地へ一歩入る。そこから歩みを進めて、玄関扉まで。その通路を「アプローチ」と呼びます。家から出かける時、家に帰ってきた時、必ず通る通路。朝、爽快に気持ちを引き締めながら自分のプライベートエリアを飛び出す。疲れて帰ってきたときに、ホッと緊張が解ける。アプローチは、そんな場所でもあります。どんなデザインなら家族が気持ちよく通り抜けられるでしょう?今回はアプローチのデザインを考えていきます。
Point.1 単なる通路にしない
歩ければ、それでいい? 確かに歩くことができればアプローチとしての役割は果たしています。でも、毎日通る場所と考えると、それだけでは物足りない。
朝出かけるときに新しく咲いた花や、ようやく芽吹いた新芽を見つけて季節の移ろいを感じる。実がなる木があれば、小鳥がやってきているかもしれません。そんな生命力に溢れた生き生きとした景色の中を抜けていくと、たくさんのエネルギーをもらって1日を始められそうです。
夜、仕事や勉強を終えて帰宅したとき、我が家の灯りを見つけてホッとした経験があるのではないでしょうか。窓から漏れる灯や玄関のライト。ぼんやり照らされたアプローチやシンボルツリー。出迎えてくれる明かりは無くてはならないものなのかもしれません。
そう考えると、アプローチでの植物や照明の必要性を感じられるのではないでしょうか。
Point.2 スタイルとアプローチデザイン
道路から玄関扉までの通路デザインは、その位置関係や距離によって多種多様になります。今回はご自宅のアプローチでアレンジしてもらえる基本的なデザインをご紹介していきます。
アプローチデザインを考えるとき、まずは建物のイメージを読み、それに繋がるエクステリア空間全体のスタイルを決める必要があります。床や壁の素材や色使いによってイメージを大きく変えることが可能ですが、そのペースとなる形状をナチュラルスタイルとモダンスタイルの大きく2つに分類することにします。
ナチュラルスタイル
木や塗りなど自然素材を多用したスタイルはナチュラルなイメージです。自然を感じさせるナチュラルスタイルでは自然界に存在しない直線を避けて、曲線ラインを描きます。
仕上げ材はラインがランダムになる素材を選びます。乱型の自然石を使ったり、端を揃えない並べ方にすると、よりナチュラルなスタイルになります。
モダンスタイル
カッコイイ雰囲気のモダンスタイルは、直線ベースのアプローチが似合います。
仕上げ材も直線的なものを選びます。石材ならスクエアに切り出されたもの。タイルのようにキレイに目地が通り表情も硬い印象のものはモダンスタイルには最適な素材です。細いラインが入るような素材もモダンに仕上がります。
Point.3 奥行きを感じさせる工夫
魅力的なアプローチは、どことなく素敵な雰囲気が漂います。その理由は、Point.1でご紹介した、植物や灯りの力が大きい。加えてもう一つ「フォーカルポイント」を意識したデザインも大切な要素。「フォーカルポイント」は視線を惹きつけるアクセントとなるもののこと。アプローチを歩くときの視線の先に設けます。視線が先へ先へと引き付けられることで、今いる場所との距離を認識し奥行きを感じられるようになります。奥行きを感じられる通路こそ、魅力的な空間を作ります。
例えば先ほどのモダンスタイルのアプローチなら
- 道路を歩いてきたときに視線に止まる位置にオーナメントを。お気に入りのアイテムでも良いし、個性的な形や色の植物でもOKです。
- 道路から建物側を向いたときに視線を受け止めるのはシンボルツリー。ボリュームのある株立ちなら存在感も抜群です。
- アプローチを歩き、方向を変えたときの視線の先には庭と空間を仕切る意味合いもある、壁を設けました。仕上げ材は塗り仕上げ?それともタイルが良いでしょうか。ウォール足元の設は植栽にするのか、それとも個性的な石を使うのか。求める雰囲気に合わせて自由自在。スタイルを表現する、とても良い存在になります。
ここに灯りを加えてみましょう。
①門周りに必要なポストやインターホンをフォーカルポイントにして、灯りを加えてもOK。入り口付近に必ず必要な機能なのでフォーカルポイントになる素敵な設を考えたいところです。
②シンボルツリーは足元から樹木をライトアップ。空間全体を柔らかく照らしてくれます。
③ウォール前には、ウォールを下から照らす明かりもおすすめです。モダンスタイルなら、カッコ良さが引き立つはずです。
スタイルを決めフォーカルポイントを意識して、緑と灯りを効果的に使った単なる通路ではない、魅力的なアプローチを考えてみてください。毎日通る場所だからこそ、こだわる価値はあると思います。きっと毎日の気分が変わるはずです。
著者プロフィール
冨田ちなみ Gokansha(ゴカンシャ)
個人住宅の庭・外構や店舗のエントランスガーデンなど、あなたのライフスタイルに調和する外空間のデザインするGokansha(ゴカンシャ)代表。二級建築士、インテリアコーディネーター、二級造園施工管理技士、福祉住環境コーディネーター、園芸療法リーダー二級、ハーブコーディネーターなど様々な資格を持ち、建築士でもあるため住宅目線・エクステリア目線・ガーデン目線、それぞれの記事を発信いたします。E&Gアカデミー講師。