家を建てる際、どうしても建物に意識が向くあまりに、エクステリアがおざなりになってしまうケースは少なくありません。しかしせっかく素敵な家もエクステリアと調和がとれていないとなんとなくちぐはぐな感じがしてしまうことも。今回は、さまざまな工夫を凝らして建物とエクステリアの一体感を出した施工例をご紹介します。
目次
デザインよりも実用性重視。雪国ならではの考え方が背景に
家を建てる際に「屋根と壁があればいい」という人はいないと思いますが、エクステリアに関してはどうでしょうか。まだまだ、カーポートと塀と門扉といった要素が揃っていれば、それで事足りるのでは?と思っている人が多いのではないでしょうか。
特に、「雪の影響で年間の3分の1ほどの期間は庭を活用できない青森では、その傾向が強い」と株式会社プロディアのプランナー、相馬蘭さんは言います。青森では都市部でも50cmほどの雪積もることは珍しくなく、デザインより機能面を重視する人がどうしても多くなってしまうのだそうです。
相馬さんが2019年に担当したF様邸も、最初の要望は「玄関前にカーポート設置、ポストは玄関横壁付けで」というものでした。
確かに、玄関から直接カーポート内に入れたり、玄関内で新聞や郵便物を取れたりすれば、雪の日はもちろん雨の日でも便利には違いありません。しかし、F様邸は道路に面した敷地に建つ南向き玄関で、片流れの屋根のハイセンスの建物だったため、その要望はとてももったいないと感じたと言います。
F様邸は平屋建てということもあって、玄関前にカーポートを設置してしまうと、道路側から見たときに、せっかくのこだわりの建物がまったく見えなくなってしまいます。そこで初回提案の際に、お客様のご要望通りのデザインパースに加え、カーポートを少しずらして道路から建物のデザインがよく見えるようにしたデザインパースも持参しました。
プロディアでは、デザインパースを作成する際、庭や外構だけではなく、建物も同じ縮尺で描き入れるようにしています。実際の建物に使用されている素材だけでなく、設定にない場合はCADの中で作るなどして、できるだけ詳細に作成します。そうすることでお施主様がリアルにイメージでき、安心して契約してもらえるからです。
実際、F様もデザインパースを見たことで提案の意図を理解し、OKが出たとのこと。道路からどのように見えるかというのは、こだわりのあるお施主様でもなかなか立てない視点ですが、エクステリア専門店ならではのアドバイスで、建物がより引立つ仕上がりとなりました。
道路側からの視線を遮りつつ、デザイン性と快適性をプラス
また、F様邸は建物前の部分が広い庭空間になっていますが、ここを道路とどのように隔てるかということに関しても、かなり試行錯誤を繰り返しました。
防犯面や道路からの目隠しを考えると、ぐるりと塀で囲んでしまうという方法もありますが、それでは南向きの庭の良さが生かされず、デザイン的にもあまり面白味のない、無機質な感じになってしまいます。
塀の一部を植栽にするというアイデアも出ました。しかし、植栽で目隠しというのは実際にはなかなか難しいもの。葉が落ちてしまう冬は家の中が丸見えになってしまうし、手入れも大変です。
何度も打合せを重ね、お施主様からの意見も取り入れながら、最終的に、塀と塀の間にアルミのアクセントポールを取り入れてデザイン性をプラスするとともに、ポールと同じ素材のスクリーンフェンスを塀と少しずらした位置に設置することにしました。
一見スクリーンフェンスは塀とはずいぶん離れているように思えますが、道路を通る車や人からは、塀と同じ面で連続しているように見え、ほどよい目隠しになります。一方、庭にいれば陽の光や風を感じられ、心地よい時間を過ごすことができるのです。
打ち合わせ時に奥様がガーデニングが好きだと話をしていたことから、庭で過ごす時間を快適にするために、いくつもの工夫を重ねたというわけです。
建物とエクステリアを一体化させるための3つの工夫
外から家を見た場合、建物とエクステリアが調和していることはとても大切です。どれだけ良い素材を使ってデザインに工夫をこらしても、建物に合っていないエクステリアはなんとなくちぐはぐな感じに見えてしまうものです。
今回、F様からハウスメーカー経由で依頼が来たのは建物が建った後だったため、エクステリアを建物に合わせるかたちで、一体感を作り上げていきました。
建物とエクステリアとのまとまりを出すにはさまざまな手法がありますが、F様邸では以下のようにして調和をとっています。
形をリンクさせる
特徴的な屋根の形に合わせて、ポストを取り付けるポールの形も同じ形状のものにしました。さらに、玄関前のアプローチでも同じようなモチーフを表現しています。これは、土間コンクリートの目地を生かしたもの。コンクリートは温度の変化によって収縮や膨張を繰り返しますが、この繰り返しによってひび割れが発生する場合があります。それを防止するために、一定の間隔で目地を入れるのが一般的です。その目地部分に石を入れて、デザイン性をプラスしました。
サイズ感をリンクさせる
一般的に化粧ブロックのサイズは幅40cm×高さ20cmのものが多いのですが、今回は幅80cm×高さ10cmのものを選んでいます。建物の外壁の一部(正面左側の凸部分)に使用されているものとサイズ感を合わせるためです。通常のブロックより価格は上がってしまいますが、外からF邸を見た際、視界の大部分を占めるブロックが通常のサイズのものだとどうしても違和感が出てしまうからと、相馬さんがあちこち探して見つけた素材です。サンプル持参で提案したところ、とても喜んでもらえたそうです。
質感をリンクさせる
建物の玄関ドアやサッシなどに合わせて、カーポートや塀の間に設置したアクセントポール、スクリーンフェンスはそれぞれ、木の質感が感じられるようなものを選択しました。最近ではエクステリアに使われるアルミ素材も、もともとの金属色のほかに白や黒、ブラウン、木目などカラーバリエーションが増えています。建物とバランスが取れるような色や質感を選ぶことで、一体感が出しやすくなります。
家を素敵に演出するために、エクステリア専門店に依頼するという選択
今回使用したカーポートとフェンスは、YKK APのものです。カーポートは、車の出し入れがしやすい6本柱で、200cmまでの積雪と46m/秒相当の風圧に耐える雪国仕様の「ジーポートneo」です。
フェンスはほどよく視線をさえぎる格子デザインで、外からの目線をほどよくカットする「ルシアス スクリーンフェンス」。敷地をぐるりと囲うような使い方をされることが多いのですが、今回のように1枚だけ使用するのも面白いアイデアです。
塀と塀の間に挟むように設置したアクセントポールは、フェンスと同じシリーズの「ルシアス アクセントポール」です。門柱やポストと組み合わせたり、格子のように敷地を囲ったりと自由な使い方ができます。
エクステリアは早めに計画すればするほど建物との一体感が出しやすくなりますが、建物が仕上がった後でも、プロディアのようなエクステリア専門店に相談すれば、空間全体を引立たせるようなさまざまな提案をしてくれます。
専門店というと敷居が高いように思う人もいるかもしれません。しかし難しい専門用語でまくしたてられたり、プランを押し付けられたりするのではという心配は無用。プロディアはもちろん他の施工店でも、しっかりと希望を聞いて、その家に最も合うと思われる提案をしてくれることがほとんどです。F様邸でも、奥様と何度も打合せを重ね、奥様のアイデアも生かしつつ、機能面、デザイン面、予算面すべてで納得がいくエクステリアを一緒に作り上げていきました。
ハウスメーカーが家(建物)のプロなら、エクステリア専門店は庭や外構に関するプロ。商品知識や施工アイデアも豊富なので、こだわりの家を素敵に演出したいなら、エクステリアにもしっかり予算を確保して、専門店に相談に行くのがおすすめです。
物件データ・採用商品
◆このリフォームを行なったのは
株式会社プロディア https://www.prodea.net/
青森県にあるエクステリア&ガーデンの設計・施工を行う専門会社。丁寧なヒアリングとオリジナリティあふれるプランニングで相談者の悩みを解決してくれると評価が高い。特に提案時の精細なデザインパース(3D CADによるデザイン図)は、お施主様からの信頼につながっている。デザイン力にも定評があり、YKK APはじめ、エクステリアコンテスト受賞も多数。
◆物件データ
- 建物種別:一戸建て
- 築年数 :新築
- 工事期間:約1カ月
◆採用商品