庭という空間にとってリラックス出来るということは、とても大切なことです。特に住まいの庭にとっては。家で過ごす時間を心地よいものにするため、社会でのストレスを解消するため、日差しを浴びたり庭仕事をしたりして心と身体を健康に保つため、家族みんながご機嫌に過ごせて仲良くいるため・・・いい庭は沢山の良いことを与えてくれます。今回は、そんな庭をリラックスして過ごせる場所にするために必要なことを考えていきます。
1.居場所
リラックス出来る庭にするには、庭の中で時間を過ごすことが出来る必要があります。もし「過ごすようなスペースは確保できない」という場合は、室内にいても庭があるからこそ生まれる心地よさを作る工夫が必要ですね。そんな方は、この項目はスキップして次へ進んでください。
庭に居場所があると景観的にも一気に庭らしくなります。できれば数人でゆったり過ごせると利用頻度が上がり価値ある場所になりやすいです。例えばウッドデッキ。
室内と段差なく床を繋げることが出来るウッドデッキは、部屋から何のハードルもなく庭に出ることが出来るので、一番理想的な居場所です。庭をどれだけ有効活用できるかは、どれくらいの頻度で庭に出るかということと大きく関わります。部屋と庭との間はスルッと無意識に足を踏み出せるくらいの繋がりが欲しいのです。椅子を置いてもいいし、ラグを敷いてゴロゴロしてもいい。太陽の日差しと風を感じて過ごす「部屋」のイメージです。
タイルテラスならデッキと同じフラットな床の納まりも可能ですが、建物との取り合いの関係で段差がつくことが多いです。写真のように階段を設けて出来るだけ自然に出入りができるようにします。タイルテラスは床にそのまま座るより椅子やソファ、テーブルなどのファニチャーを置くことになります。硬いし冷たいので、直座りには適しません。
もう少し手軽な居場所を設けるならベンチが良いです。
フォーカルポイントにもなり庭の景色をグッと引き締めてくれます。座ることが出来る場所があれば何でも良いのです。花壇の枠を大きめに作って腰掛けられるようにするのもおすすめ。景観的には特に居場所を設けた印象を受けないけれど、実は椅子になるし、本やコーヒーカップを置くテーブルにもなるという欲張りな花壇枠です。
こんなふうに長い時間を、その場で過ごせる居場所を作りましょう。
2.目隠し
居場所が出来たら、次はその場所で心地よく過ごすことが出来るかを検証します。居場所があっても、お隣さんや道路を行き交う人から丸見えでは、リラックスとは程遠くなります。目隠しの手段として多く使われるのはフェンスです。
目隠しフェンスは背が高いものが必要な場合が多いです。風を通す量が少ない目隠しフェンスは風当たりが強くなるので適切な強度が必要。風の強い日や台風の時に飛ばされないかと、ドキドキしなければならない状態だと不安です。万が一、飛ばされてしまったら近隣に大きな迷惑をかけることになりかねません。何よりも安全性を考慮した施工にしましょう。
庭の雰囲気に合わせて色や素材を選びます。面積が大きくなるので庭の雰囲気づくりに大きく影響します。目隠しが必要な部分を全て一つの素材や色で統一する必要はありません。道路沿いなのか、隣地境界なのか、視界に入りやすいところなのか、室内からは見えない部分なのかなど、場所によって必要に合わせて変えることでコストダウンにつながることも多いです。
視線と関係のない足元は隙間の多いタイプにすることも可能です。風通しが良くなり植物にも優しい環境になり、フェンスに対する風当たりを和らげることにもなります。
3.自然
最後は心地よさを求めて、自然を感じる環境に整えていきます。庭でリラックスすることと、部屋でリラックスすることの大きな違いは、屋外なのか室内なのかということ。屋外だからこそ作ることが出来る環境といえば、やはり自然ではないでしょうか。
「1/f ゆらぎ」という言葉をご存知の方は多いと思います。人の心拍のリズムは一定ではなく、ゆらぎがあります。生体のリズムは基本的に「1/f ゆらぎ」で揺らいでいるといわれています。そして自然の中には「1/f ゆらぎ」で揺らいでいるものがあふれている。海や川の水音、木漏れ日、揺れる枝葉、自然の造形・・・これらの揺らぎを感じると人は癒されリラックスできます。
庭の中に自然を持ち込むには、植物を植えること。上から降り注ぐ日差しを遮る大きな樹木は、木漏れ日を作ります。中木低木は視界に入りやすい高さで、空気の流れでゆらぎ、日差しに照らされたり影になったりとゆらぎます。足元も土のままより、グランドカバー を植えて小さなゆらぎを感じる状態にしたい。植物があると、そこに蝶や鳥がやってくる。鳥のさえずりも聞こえてきます。
居場所を作り、他人の視線を気にしなくて良い状態にする。そこに自然を取り込む。住まいの庭をリラックス出来る環境にするために必要なことは、この3点です。庭に居場所を作るスペースが取れない場合は、室内にいて自然が感じられる状態を目指します。カーテンを全開放して過ごせるように整え、庭の緑を楽しめる環境を作ります。どこに出かけるよりも我が家がリラックス出来る。そんな庭を目指して、庭づくりをしてみませんか。
著者プロフィール
冨田ちなみ Gokansha(ゴカンシャ)
個人住宅の庭・外構や店舗のエントランスガーデンなど、あなたのライフスタイルに調和する外空間のデザインするGokansha(ゴカンシャ)代表。二級建築士、インテリアコーディネーター、二級造園施工管理技士、福祉住環境コーディネーター、園芸療法リーダー二級、ハーブコーディネーターなど様々な資格を持ち、建築士でもあるため住宅目線・エクステリア目線・ガーデン目線、それぞれの記事を発信いたします。E&Gアカデミー講師。