都市近郊の住宅は、とても便利なことが利点ですが人気が高いことから土地価格が高額です。となると住宅はどうしてもコンパクトになってしまいます。前面道路からすぐに建物の玄関へつながる。そんなレイアウトの住宅が多くなります。広々としたエントランスは作れないですが、コンパクトだからこそ生み出すことができる空間もあります。今回は都市近郊に多いコンパクトな玄関周りの考え方をご紹介します。
機能柱と玄関扉で「シンプルコンパクトな玄関周り」
一番よく見かけるのは、インターホン・ポスト・表札などの必要な機能を備えた「機能門柱」を設置したシンプルな玄関周り。
こちらの機能門柱は、ポストに加えて宅配荷物も受け取れる「宅配ポスト」も組み込まれたタイプ。近年の宅配ポスト需要の伸びとともに、たくさんのバリエーションが開発されています。機能門柱と玄関扉がコーディネートされていて素敵ですね。忙しくてお手入れはできない!というご家族は、こんなメンテナンスフリーの玄関周りを採用されることが多いです。
でも、もっと素敵にできないのかな?という思いも湧いてきます。せっかくの外部空間なので、やっぱり植物を取り入れて、緑や花を愛で、お手入れで緑に触れて癒される。そんな玄関周りをお勧めしたい!
「エントランスガーデン」だって作れる
限られたスペースだからこそ、無駄なく生かして素敵にしたい。玄関ポーチ部分を活用してエントランスガーデンを生み出したプランがこちら。
道路に向かって玄関扉が開くコンパクトな玄関周りです。玄関ポーチから横に階段を降りて道路に出るという導線にしています。一般的には玄関ポーチは建物の一部として作られて玄関内の床と同じ仕上げになっていることがほとんど。タイル張りが多いですね。このプランでは、玄関ポーチも庭の一部と考えて仕上げや大きさなどを庭的にデザインしています。水道の蛇口を設けたり部分的に砂利敷きにしたり、複数の要素を組み込むことで庭らしさが表現されていきます。
また庭らしい豊かさを表現するには緑をたっぷり感じさせる空間にすることがポイント。でもコンパクトな空間では樹木をたくさん植えることは難しい、でも緑は欲しい。悩ましいですね。そんな時はつる性植物で立体的に緑を誘引すると効果的です。誘引するゲートやフェンスを上手に配置します。
庭がない家でも玄関ポーチは必ずあるはず。工夫次第で庭が生まれるのです。毎日通る場所だから、少しずつお手入れもできるし季節ごとの変化にもたくさん気づける。とっても楽しませてくれる庭になるはずです。家を彩り、素敵に見せるエントランスガーデンはオススメです。
安心感のある玄関周り
コンパクトな玄関周りは道路と近い。玄関扉を開けて数歩で道路という状態は、小さな子供がいる家庭では不安要素です。元気よく飛び出す子供にハラハラすることも多いのではないでしょうか。玄関扉を開けると道ゆく人とすぐに目が合う、道ゆく人から家の中が見えてしまう。これでは落ち着かないしプライバシーが守られないようで不安です。
そんな不安を解消するには玄関前をスッポリと覆ってしまうという方法があります。玄関扉の正面に大きな壁がある状態です。圧迫感はない?窮屈にならない? そんな不安も感じるかもしれませんが、それよりも守られている安心感が勝ります。壁部分は光を通したり緑を誘引したりできたり、隙間があって風通しも良い状態も作れます。木調の素材を選べばナチュラルな家とのコーディネートも可能です。
囲われ感と庭の雰囲気の両方を求めるなら、庭のようにパーゴラを設けても。ここでも植栽を立体的に誘引することで、より庭的な雰囲気を作っています。数種類のつる性植物を誘引しても素敵になりますよ。
コンパクトな玄関周りでも、いろんな空間を作ることができます。狭いからと諦めずに我が家に必要な玄関周りを追求してください。そして、できれば一つでも多くのエントランスガーデンが生まれて都心近郊の住宅地にも緑がつながる街並みが増えれば嬉しいなと思っています。
著者プロフィール
冨田ちなみ Gokansha(ゴカンシャ)
個人住宅の庭・外構や店舗のエントランスガーデンなど、あなたのライフスタイルに調和する外空間のデザインするGokansha(ゴカンシャ)代表。二級建築士、インテリアコーディネーター、二級造園施工管理技士、福祉住環境コーディネーター、園芸療法リーダー二級、ハーブコーディネーターなど様々な資格を持ち、建築士でもあるため住宅目線・エクステリア目線・ガーデン目線、それぞれの記事を発信いたします。E&Gアカデミー講師。