外構やお庭を計画する上で「目隠し」というキーワードは避けては通れません。リビング前や物干しスペース、お庭のウッドデッキで過ごすときの目隠しなどプライバシーの確保をしたい場所は身の回りにたくさんあるものです。
目隠しをしたい場所の中で、意外と見落とされてしまうのが「玄関前の目隠し」です。敷地の形状や建物の配置にもよりますが、玄関前はインターホンやポストなどを取付ける門まわりスペースとなる場合が多く、訪れる人々が必ず立ち止まる場所となります。
そこで今回のブログでは、玄関から室内が丸見えにならないように外構でできる目隠し方法をご紹介します。また、その対策に取り掛かる前に確認すべき点も合わせてご紹介しますので、ぜひ参考にして安心感のある玄関周りづくりに役立ててくださいね。
1.道路と玄関の距離や高さ別の目隠し方法
1.道路から玄関までの距離が近い場合
道路から玄関までの距離が近いということは、玄関前のゆとりのスペースが少ないとも言えます。このような配置条件の場合に取り入れたい目隠し方法として、『門柱との兼用』『目線のコントロール』『立ち位置の設定』があります。
まずは『門柱との兼用』についてご説明します。玄関周りに必ずあるものといえば、表札やインターホン、ポストですよね。それらは門柱と呼ばれるブロック塀に取り付けたり、既製品の機能門柱を玄関付近に設置することがほとんどです。それにプラスして目隠しを別で付けるとなると…ただでさえゆとりの無いスペースがさらに減ってしまいそうです。空間を有効に使う為には、門柱と目隠しを兼用するのが方法のひとつ。すっきりシンプルにまとめることもできますし、タイル張り仕上げやRC造りにすることで高級感や重厚感の演出も可能です。
次に『目線のコントロール』ですが、上の写真を見ていただくと建物と玄関に対して目隠しフェンスが角度を付けて設置されているのがお分かりいただけると思います。これは、訪問者がインターホンを押して待っている際に玄関扉が開いても目線が室内へ向かないようにコントロールしているのです。目線の方向がコントロールされているので、目隠しフェンス自体も隙間を詰めたデザインではなく、抜け感のあるものを採用できるという訳です。
最後に『立ち位置の設定』です。訪問者の立ち位置をデザイン的に決め打ちすることで、室内への目線を遮る方法です。上の写真は玄関扉の真正面には遮るものは何もありません。ですが、訪問者を右手前のインターホン設置のウォール前にとどめておくことで室内への目線を遮っています。
ここまで3つの方法をご説明してきましたが、いずれの場合においてもエクステリア計画での目隠し対策だけでなく、玄関扉の開き勝手についても合わせて検討することでより高い目隠し効果が得られます。
2.道路から玄関までの距離が近く、高低差もある場合
通常、道路面から玄関ポーチの上までは階段2段分(約40センチ)の高低差がありますが、それにプラスして道路と敷地自体に高低差がある場合も考えられます。前面道路と敷地の高低差が約40センチあるものと想定して、どんな風に目隠し対策すれば良いかをイラストにまとめました。
まず、目隠しの高さは道路を歩く人の目線を考慮して設置することが重要です。目線の高さは、おおよそ身長マイナス10センチ。大柄な通行人を想定したとしても道路から180センチの目隠しがあれば安心でしょう。
これを玄関ポーチに立っている住人(例:身長160センチ)の目線で考えると、上の図のように230センチ以上は必要となり圧迫感を感じることは否めません。また、目隠しの背が高くなればなるほど費用もかかってしまいます。しっかりと隙間なく隠してしまうのが理想的ではありますが、下の図のように一部分を意識して隠すという考え方もあります。
道路から180センチの目隠しを設置し、玄関内の散らかりやすい床面のみをしっかりと隠します。また、目隠しを玄関ポーチの上に建てられる構造にすれば必要高さは100センチとなりますので、コスト削減にもつながります。
3.道路から玄関までの距離が十分にある場合
「わが家は道路から玄関まで十分に距離があるから、目隠し対策なんて必要ありません!」確かに距離が十分にあれば、ほとんどの場合目隠し対策は必要ありません。気を付けるべき点は1点。インターホンの設置位置です。
訪問者はインターホンを押して、その前で立ち止まって待っていることがほとんど。ということは、インターホンの設置位置が玄関に近ければ近いほど、扉を開けた際に室内へ目線が通りやすくなるということ。プランはプロに任せておけば安心ではありますが、出来上がったプランを家族でしっかりチェックできる知識を持っておくと、さらに安心ですね。
2.対策に取り掛かる前に確認しよう!
1.自分や家族の目で確認する
目隠し対策をする際に、まずチェックしたいのが高さと範囲です。これが希望に合っていなければ元も子もありません。玄関前の歩道や玄関ポーチの上に立って、どの程度の高さの目隠しがどの範囲で必要なのかを実際に自分たちの目で確認してみましょう。
2.住まいの外観がより良いものになっているか確認する
玄関周りは住まいの印象を左右する重要な場所と言えます。その重要な場所へ、どのような形であれ「目隠し」というボリューム感のあるアイテムを設置するのですから、建物のイメージに合わせたものであるのは当然のこと、よりエントランスをセンスアップして魅せたいものです。
その為には、プロに提案を受けるのがおススメです。図面やイメージ図を作成してもらうことで、建物と目隠しを含めたエクステリア全体の調和がとれているかをしっかり確認できますよ。
3.生活動線を妨げていないか確認する
室内への目線を遮ることばかりに気を取られて目隠しを設置すると、その目隠しが日常の生活動線を妨げてしまった…ということも起こりかねません。玄関周辺はスペースが限られている場合も多く、設置場所をしっかり検討しないと玄関へのアクセスや駐車場への通行が不便になることもあります。
そうならない為には、事前に生活動線をイメージすることが大切。通勤時の玄関から車へのアクセスや買い物帰りの自転車置場から玄関までの動線、ポストの郵便物を取り入れる際の動作まで…できるだけ具体的に思い描いてみることが、より自分たちの暮らしにマッチした玄関周りづくりへの近道です。
3.安心感のある玄関周りづくりの為に…
「玄関前の目隠し」とひと言で表すのは簡単ですが、実際は、機能性や安全性の確保から住まい外観のランクアップまで様々な要素が折り重なっている重要なアイテムです。今回のブログを参考に、玄関周辺のプライバシーを確保していただき、ご家族みなさんの快適な暮らしへの第一歩としていただければ嬉しく思います。
著者プロフィール
山岡由佳 クラスデザイン代表
二級造園施工管理技士、一級エクステリアプランナー
京都府立大学 人間環境学部 環境デザイン学科を卒業後、E&Gアカデミーにてエクステリアとガーデンを専門的に学ぶ。 エクステリアとお庭の専門店にて15年、ランドスケープデザイン設計事務所にて2年の実績と経験を積み、 2020年に独立し「cras design(クラスデザイン)」を設立。 個人宅向けの外構造園設計や施工店への作図サービスを中心にSNS運用サポートやブログ執筆サービスも行っており、 様々な視点から役立つ情報をお届けしています。