人気の平屋住宅は、ワンフロアで動線が短く、暮らしやすいのが魅力です。一方で、地面に近い分、外からの視線や日当たり、風通しといった外構や庭の工夫が重要に。今回は、2階建てにはない、平屋の暮らしをもっと快適、便利にしてくれる、おしゃれで暮らしやすい外構や庭づくりのポイントをご紹介します。
目次
平屋ならではの広がりを活かす「地面目線の開放感デザイン」

家の中と外とスムーズにつないでくれるリウッドデッキ(YKK AP)
平屋は縦ではなく横に広がる構造のため、目線が地面に近いのが特徴です。リビングやダイニング、寝室、子供部屋など、どこにいても庭や周囲の景色とつながることができ、また目線が低いからこそ、室内と屋外に一体感が生まれ、開放感があります。
この平屋ならではの特性を活かすためには、「地面目線の開放感」を意識した計画がポイントになります。
例えば、フェンスや垣根は高さを抑え、さりげなく外からの目隠しをしつつ、庭の奥行きや遠景を楽しめるよう工夫しましょう。目線が遠くまで通るようになれば、庭全体より広く感じられ、家の中にいても開放的な雰囲気が味わえます。
その際には、小さな樹木や草木は手前に、窓から離れるにつれて高さのある樹木を配置すると、遠近感が生まれ、庭の奥行きを自然に演出できます。家の高さを超えるような背の高い樹木はシンボルツリー程度にとどめ、フェンスや垣根は高さ80㎝~120㎝程度を中心に構成すると、程よく目隠しをしつつ自然な広がりを感じられるようになります。
門扉やアプローチも低めに設計するのがポイントです。平屋は横に広がる安定感のある建物。高さのある外構を組み合わせると、ともすると目立ち過ぎて、重心が上に偏って不安定な印象になってしまうことも。低めにすることで、視覚的な一体感が生まれ、広がりある平屋の魅力がより際立ちます。
プライバシーを守りつつ閉じすぎない「自然な目隠し」

平屋の心地よさを高める解放感のある庭。目隠しの工夫で落ち着いた空間に(YKK AP エクステリア スタイル大賞2023年ガーデン部門ブロンズスタイル賞 採用商品:リレーリア フロントフレーム・ルシアス フェンス/ライフスタイル)
https://lifestyle-shimane.jp/
平屋はすべての部屋が1階にあるため、道路や近隣からの視線が気になる、プライバシーが守りにくいなどのデメリットもあります。だからといって、高い塀や壁で完全に囲んでしまうと、閉塞感が生まれ、室内も暗くなりがちに。
そこで、平屋の良さを活かしつつ、デメリットを解消するために、自然な目隠しを意識した外構や庭の工夫をしましょう。
おすすめは、風を通すルーバータイプのフェンスと植栽の組み合わせ。風通しよく、適度な透け感があるので、圧迫感なく目隠しができます。
また、特に視線が気になる窓があったら、窓の外にさりげなく樹木を配置する方法も。家の中からは庭や景色が見えますが、道路や近隣など少し離れた位置から見ると、葉や枝が重なり合って視線を自然に遮ってくれます。
防犯面も忘れずに対策を。空き巣は窓からの侵入が多いため、まずは敷地内に侵入しにくいよう門扉は鍵付きのしっかりとしたものを選びましょう。また、見通しを確保して、隠れて作業しにくい環境を作ることも大切です。
窓には面格子やシャッターを取り付け、植栽で視線を遮りすぎる場合は、防犯センサーライトや足元照明を組み合わせて取り付けておくと、昼も夜も安全で快適に暮らせる住まいになります。
室内と庭をスムーズにつなぐ「フラットなリビング延長」

ステージのようなひろびろとしたリウッドデッキのアウトドアリビング(YKK AP エクステリア スタイル大賞2020年ガーデン部門シルバースタイル賞/採用商品:リウッドデッキ200・エルビュートハンドレール/伊藤硝子店)
平屋は、リビングだけでなく他の部屋からも庭に出やすく、庭を家の中の続き間のように使いやすいのが特徴です。寝室からつながれば毎朝庭に出て朝日の下で体操をしたり、リビングからつながればもうひとつの「アウトドアリビング」として、家族の憩いの場にしたりすることもできます。
でも、ただ庭が隣接しているだけでは、出入りがしにくく、思ったほど活用できないことも。そこでせっかくの平屋の暮らしをもっと楽しむために、室内から庭へとスムーズにつなぐ工夫をしましょう。
例えば、リウッドデッキを室内の床の高さに合わせて設置すれば、室内から庭まで段差なく移動できるように。出入りがスムーズになれば、自然に庭に出る機会が増え、家族でゆったりと過ごせる快適な「アウトドアリビング」になります。
その際には、リウッドデッキと室内のフローリングのカラーコーディネートも忘れずに。内外の床材に統一感を持たせることで、一体感がより強まります。
リウッドデッキの上に、テラス屋根やオーニングを設けるのもおすすめ。日差しの強い日や雨の日でも安心して庭に出て、快適に過ごせるようになります。
家具選びにもひと工夫を。座り心地のいいソファや使いやすいテーブルを揃えれば、アウトドアリビ
ングとしての居心地が格段にアップします。
平屋だからこそ、庭を暮らしの延長として最大限に活用したいものです。内外の一体感を高め、居心地をアップする工夫をして、快適なアウトドアリビングを作りましょう。
玄関まわりを主役にする「低めラインで見せる平屋アプローチ」

デザインと素材感にこだわった、立体感のある玄関まわりとアプローチ(YKK AP エクステリア スタイル大賞2023年ガーデンライティング部門ブロンズスタイル賞 採用商品:ルシアス ウォール/ 株式会社 原田造園)https://haradazoen.com/
平屋は建物の高さが抑えられている分、玄関まわりやアプローチのデザインがより目立ちます。ポイントは、低めのラインでまとめて建物とのバランスをとること、また地面に近い部分の素材感が際立つので、素材選びもしっかり吟味しましょう。
アプローチの床には、石材やタイル、砂利など質感のある素材を使うと、短めのアプローチでも存在感を演出できます。
また、平屋は横に広がる安定感がありますが、外観が平坦に見えやすいことも。門柱や植栽、段差のあるアプローチでアクセントをつけると、変化のある立体的な外観になり、おしゃれな印象になります。
その際も、門柱や門扉は低めに設計して、建物との高さのバランスを整えるのがポイントです。計画の際には、平面図だけでは分かりにくいので、立面図や3Dパースを見せてもらうとイメージがつかみやすくなります。
カーポートを設置する場合は、平屋は高さが低いためより目立ちますので、高品質な製品を選ぶのがおすすめ。
平屋の玄関まわりは、まさに家の顔となる場所です。素材やデザインにこだわることで、より魅力的な外観デザインにすることができます。
夜の平屋を立体的に際立たせる「低めライティング」

リウッドデッキに間接照明を組合わせて。低めのラインを際立たせれば夜の平屋が美しく際立ちます(YKK AP)
平屋は高さが抑えられている分、建物の立体感が分かりにくく、特に夜は平坦に見えてしまうこともあります。そんな時は、照明で陰影をつけると、夜の外観が美しく魅力的になります。
例えば、玄関やアプローチの足元に間接照明を設置すると、建物のラインが自然に際立ちます。門柱や植栽を下からライトアップするのもおすすめです。横に広がる建物や樹木の輪郭が光で強調され、立体感や奥行きを感じやすくなり、昼間とは違った幻想的な雰囲気を楽しめます。
リウッドデッキと間接照明を組み合わせるアイデアもあります。光の中に浮かび上がるリウッドデッ
キが広がる風景は、夜の庭で過ごす時間を特別なものにしてくれることでしょう。
ただし、照明を設置する際には、光の位置に注意を。高い位置に光源を置くと、光が上から拡散して建物の輪郭や立体感が目立たなくなってしまいます。
平屋の夜のライティングは、低さを生かした光の配置がポイントです。足元や植栽、リウッドデッキ、建物のラインを意識した照明計画で、わが家ならではの美しい景色を作り出しましょう。
平屋は高さが抑えられている分、横に広がる開放感や室内と屋外のつながり、玄関まわりの存在感など、2階建てにはない魅力があり、その良さは外構や庭づくりでさらに際立ちます。
地面目線の開放感、自然な目隠し、フラットなリビングの延長、低めの玄関アプローチ、そして夜のライティングの工夫で、更に快適でおしゃれな平屋暮らしを楽しみましょう。
2階建てにはない平屋の魅力を演出する商品はこちら
著者プロフィール
Yuu(尾間紫)
一級建築士/インテリアプランナー/インテリアコーディネーター/マンションリフォームマネジャー
長年リフォーム業界の第一線で、数多くの住宅リフォームの相談、プラン設計、工事に携わってきた経験から、本当に価値あるリフォームについて皆さまにお話します。過去を繕うものではなく、未来の暮らしを創る「リライフのリフォーム」を提唱。実践的なリフォームのノウハウを、テレビや雑誌、新聞連載、講演などを通して発信中です。著書に『リフォームはこうしてやりなさい(ダイヤモンド社)』など。Webサイト「リフォームのホント・裏話」(http://www.ne.jp/asahi/net/rehome/)でリフォームの実践的なノウハウを公開中













