ウッドデッキがあると庭の利用頻度が何倍にも膨らみます。室内の部屋と同じように過ごしたりくつろいだり、土やゴミが出る作業が気兼ねなくできる場所になったり、水浸しになっても何の問題もないので子供が喜ぶプールも存分に楽しめる。とにかく便利で活用範囲が広いのです。昔の家には土間と呼ばれる空間があって、室内と屋外の中間的場所となり季節や天候、時間の影響を少なくして様々に利用していました。ウッドデッキはそんな土間的空間の役割も担ってくれます。今回は「ウッドデッキが欲しいなー」と思ったときに迷うポイントを解説していきます。ウッドデッキ選びのヒントにしてください。
ウッドデッキ3つの迷いポイント
1.素材
ウッドデッキ素材の分類は天然木とリウッドに大きく分かれます。どちらが良くてどちらが悪いというわけではなく、それぞれの特性を知って自分たちの暮らしに相応しい方を選んでください。
天然木ウッドデッキ
ウッドデッキに使われる天然木には、たくさんの種類があります。今回は大きくふたつ、硬い木材と柔らかい木材に分けてご紹介します。
イペ・セランガンバツ・アマゾンジャラなどアイアンウッドと呼ばれる硬い木材は、マレーシア・インドネシア・ブラジルなどから輸入されています。密度が高く、硬く重い木材。吸水率が低いので耐水性があり耐久性が高い。耐用年数は30年程度と言われています。色褪せていく経年変化を楽しむなら、塗装無しで仕上げても大丈夫。耐用年数はその場の環境に左右されます。
レッドシダー・サイプレス・檜など肌当たりが柔らかく節がナチュラルな印象の木材は、比重が低く蓄熱しにくいので夏の陽射しの照り返しが、さほど気になりません。木材自体が熱くなりにくく夏でも素足で歩くことが可能です。木材の表面には防腐効果のある塗料を施し、塗料が劣化する2年程度のサイクルで塗り直しをお勧めします。耐用年数は15年から20年。経年変化しますが、メンテナンスするたびに気持ち良い状態に戻ります。耐用年数はその場の環境に左右されます。
リウッドデッキ
リウッドは、木粉とプラスチックを混ぜて作られています。菌類による腐朽やシロアリによる食害に強く、天然木と比べると耐候性が高く色褪せが緩やか。防腐のための薬剤処理の必要もないのでペットやお子様にも安心です。硬度が高いので夏は表面温度が高くなりやすくスリッパなど履物を履くことをお勧めします。天然木なら板材同士の目地幅を10mm程あけるところを、リウッドなら目地幅を3mm程度に小さくすることも可能で、隙間から落し物をする心配が無くなります。地球環境に配慮したリサイクル可能なリウッドやノンホルムアルデヒドのリウッドもあります。
2.レイアウト
ウッドデッキのレイアウトは、ウッドデッキをどのように使いたいかによって変わります。部屋とウッドデッキと庭とのつながりを考えながら、自分たちの生活空間にしっくりハマるレイアウトを見つけてください。
ベーシック
テーブルとチェアを置いて食事をしたり仕事をしたり。デッキの上で過ごすことを目的にするのなら幅と奥行きの両方が必要です。規格サイズのウッドデッキはこの形状のサイズ違いバリエーション。ウッドデッキを屋外にある部屋のように使うなら、室内の部屋のように正方形に近い形状が使いやすいと思います。下図のレイアウトなら和室とリビング、2つの部屋から見える庭の景色が大きく変わるのも魅力です。
縁側えんがわ風
室内と庭をつなぐ意味合いの強い形状です。ウッドデッキは庭の地面高さから500mmほど高くなるので、椅子の代わりに腰掛けるにはピッタリ。庭にいても室内にいても、庭全体で緑を感じられる空間にしたい。植物を植える場所や土や園路・・・庭らしい空間をたくさん残したいときは縁側のように使える細長い形状がお勧めです。屋外で和室とリビングをつなぐ導線が生まれるのも魅力。庭に面した、どちらの部屋からも庭とのつながりを確保できます。
変形
木材は加工が容易なので、どんな形状のウッドデッキでも実現可能です。円形や曲線ラインのデッキも施工出来る。でも木材の形状は直線の棒状。できるだけロスなく材料を使うことや施工性を考えると直線ベースの形状にコスト的メリットがあります。リビングの前にはデッキの上で過ごすことができる広いスペースを残し、和室前では庭とのつながりを確保する。そんな条件を満たすなら、ベーシック形状と縁側風形状を組み合わせた台形もお勧めです。斜めの長いラインが距離を感じさせ、庭を実際よりも広く感じさせる効果もあります。図のような方向で椅子をおくと、部屋の中から見ている景色とは違った眺めを楽しめるのも大きな魅力です。
3.サイズ
どれくらいのサイズあれば十分なのだろう?そんな疑問があるときは実際にどのように使うのかをシミュレーションしてみます。
4人で食事ができるデッキ
毎週末は家族みんなと庭で過ごす時間が楽しみ。ゆっくり過ごすなら料理を並べて食事のできるテーブルと長時間座っていても疲れない椅子を用意したいですね。テーブルサイズ+椅子サイズに加えて、みんなで座っているときに周囲を歩くスペースが必要。料理や飲み物を運ぶ通路が必要だし席を立つことだってあります。図のような長方形のテーブルを想定すると間口幅3,200mm、出幅2,400mm程度は確保したいところです。
いつもは2人、時々パーティー
日常は2人で過ごせれば良いのだけれど、年に数回は友人たちを招いてBBQパーティーをしたい。必要な時だけ大人数で過ごせればいいというご家族も多いです。お盆とお正月だけ孫を連れて子供達が帰ってくる、そんな家族を向かい入れるご夫婦もこのタイプです。前図のようにみんながキチンとテーブルにつくと考えると、とても広いスペースが必要になります。もちろん、それでも良いのですが2人で暮らす日々の日常を重要視しても良いのではないでしょうか。この場合、大人数の時はデッキをベンチとして利用します。奥行き最低900mm確保できれば食器やグラスを置くテーブルを兼ねるにも十分。腰掛けるだけでなくデッキの上に座り込むことも可能です。小さなお子様も靴を履かずに過ごせて家の中と外を行ったり来たり。BBQの火に近づくこともなく安心です。普段は小ぶりのテーブルと2人分の椅子を置いても良いし、デッキの上に直接座るスタイルでも。デッキを縁側風にスリムにした分、庭全体に緑を入れて雑木林の雰囲気を楽しむ暮らしも可能です。
自分たちが庭でどんな風に過ごしたいのか、イメージは固まってきましたか?メンテナンスの時間は取れないのか、住まいに自分たちで手を入れていくことを楽しむのか。暮らしの中で何を大切にするのかは、考え方が別れるところです。自分たちの生活に馴染むウッドデッキを選んで、庭で過ごす時間をもっともっと楽しんでください!
※ リウッドは再生木・人工木・樹脂木などとも呼ばれます。YKK APでは「リウッド」と表記しています。
著者プロフィール
冨田ちなみ Gokansha(ゴカンシャ)
個人住宅の庭・外構や店舗のエントランスガーデンなど、あなたのライフスタイルに調和する外空間のデザインするGokansha(ゴカンシャ)代表。二級建築士、インテリアコーディネーター、二級造園施工管理技士、福祉住環境コーディネーター、園芸療法リーダー二級、ハーブコーディネーターなど様々な資格を持ち、建築士でもあるため住宅目線・エクステリア目線・ガーデン目線、それぞれの記事を発信いたします。E&Gアカデミー講師。