窓庇(まどひさし)とは、窓の上部についている小さな屋根のこと。霧除けとも呼ばれ、取り付けておくと暮らしが格段に快適・便利になります。今回は、窓庇のメリット・デメリット、後付けリフォームが可能でおしゃれなデザインの窓庇製品をご紹介します。
目次
庇とは。最近は庇のない家が増えている!?
庇(ひさし)とは開口部の上に取り付けられた小さな屋根のことで、窓の上に付いているものを「窓庇」、玄関ドアの上に付いているものを「玄関庇」と呼んでいます。ちなみに建物から外側に突き出た屋根の部分は「軒」といいます。
最近の住宅のデザインでは、コストダウンや、狭小地など敷地形状の問題、窓の性能の向上、またシンプルな外観デザインが好まれるようになったことなどから、建築時に窓庇の取り付けをしない家も増えています。
しかし、庇や軒は、室内への雨水の吹き込みや夏の日差しを防ぎ、外壁汚れを軽減してくれるなど、たくさんのメリットがある重要な部材です。
今どきは、おしゃれなデザインでメンテナンスが楽な後付けリフォームができる庇製品があります。上手に選んで、毎日をより快適に便利に暮らしましょう。
意外と多い窓庇のメリット。窓まわりの汚れを防ぐ役割も
窓庇を取り付けることによるメリットをご紹介しましょう。主なものは以下の4つです
<1>雨の日に窓を開けても安心
窓庇は「霧除け」ともいい、これは「霧除け庇」の略で、主に雨の吹込みを防ぐためにそう呼ばれてきました。
日本では古来より、軒が長く、庇を取り付けている家が数多くありました。これは日本の気候でより快適に暮らすための知恵です。
日本は雨が多い国です。窓を開けている時に急に雨が降ってきた、換気のために窓を開けたいといった時も、窓庇が付いていれば家の中への雨水の吹込みを防ぐことができます。
もちろん窓のすぐ上に大きな軒が出ていれば、窓庇は不要でしょう。しかし軒がない、もしくは2階以上の高い位置にある場合は、窓庇が無いと小雨でも雨水が家の中に入りやすくなります。
雨の吹き込みは、フローリング材の変色や腐食の原因になってしまうこともあります。窓庇があれば、少々の雨なら安心して窓を開けておくことができるようになります。
<2>夏の強い日差しを遮って涼しくする
窓庇には、家の中に差し込む夏の直射日光を遮って、室内の暑さを軽減する効果もあります。夏の室内の暑さの原因は、太陽光が運んでくる日射熱によるものです。暑さを防ぐためには、この日射熱を遮ることが効果的で、日よけをすることがポイントになります。
夏の太陽は高い位置にあるので、小さな窓庇でも日よけ効果を発揮してくれます。逆に冬の太陽は低い位置にあるので、窓庇に遮られることなく室内へ日差しが届きます。夏は涼しく、冬は暖かく、まさに先人の知恵が詰まった部材です。
ただし強い朝日や西日は太陽が低い位置にあります。これらを防ぎたい場合は窓庇ではなく、窓の外側から全体を覆うのが効果的です。窓庇に加えて、スダレや外付けのシェード、オーニングなどを併用するといいでしょう。
<3>窓周りの汚れを防ぐ
窓庇や軒がなく、雨が直接窓に当たりやすいと、窓や周辺の外壁が汚れやすくなります。
雨水は排気ガスや、大気中のホコリ、泥などが含まれています。雨が直接当たる窓は、これらの汚れが付きやすく、また窓の周囲の凸凹に溜まった汚れが雨水と共に流れて、外壁に黒い筋汚れが付きやすくなります。
この汚れは排気ガスなどの油分を含んでいるため、水洗いだけではなかなか落ちません。窓庇があれば、雨が直接当たりにくくなるので、このような汚れを防ぎやすくなります。
<4>省エネ性能の向上ができる
住宅の省エネ性能の検討には、軒や窓庇の有無、長さが関係します。省エネ住宅にするためには、日射熱のコントロールは欠かせないものです。軒を延ばしたり、窓庇を取り付けたりすることで、より省エネな家を作ることができます。
このように、窓庇には、雨の日に安心して窓を開けることができる、夏の強い日差しを遮って涼しくする、窓周りの汚れを防ぐ、そして省エネ性能の向上ができるなど、たくさんのメリットがあります。
窓庇のデメリット。腐食すると雨漏りをすることも
窓庇にはデメリットもあります。主なものは以下の3つです。
<1>コストが掛かる
窓庇を取り付ければそれだけ費用がかさみます。コストダウンのために窓庇を付けない選択をするケースがあります。
<2>狭小地で邪魔になる
都市部の狭小地では境界線ぎりぎりに家を建てることも少なくありません。そのため軒の出や窓庇など外壁からの突起物があると邪魔になり、時には家が小さくなってしまうことも。都市部の密集地では軒の出は小さく、庇は付けないプランが多く見られます。
<3>メンテナンス不足による雨漏りリスク
以前の窓庇は一般的に木造で、屋根は鋼板など金属で葺かれていました。これらの庇がメンテナンスをしないまま放置され腐食してしまうと、雨水が侵入して雨漏りの原因になってしまうことがあります。もちろん定期的にメンテナンスを実施すれば問題はありません。
以上のデメリットを解決できるのであれば、窓庇はぜひ取り付けておきたいもの。毎日をより快適に便利に、そして安心して暮らせるようになります。
後付けリフォーム可能、メンテナンスが楽でおしゃれな窓庇製品いろいろ
今、窓庇が取り付けられていない家でも後付けリフォームができ、メンテナンスが楽な製品があります。デザインもスタンダードなものから、モダンでおしゃれなものまで揃っています。
こちらは新築でもリフォームでも取り付けができる、アームスタイルの庇です。シンプルでフラットなデザインなのでモダンな外観デザインの家によく似合います。軒天を木調にすることもできます。
幅や出幅(奥行き)のサイズが豊富にそろっているので、玄関庇や勝手口庇とコーディネートしやすいのもポイント。アルミ製で腐食の心配が少なく、長く安心して使えます。
また一般的な庇は雨どいがついていないため、雨水を前面から排水します。このタイプは屋根の軒先部分に立ち上がりを作って集水し、両側面から排水するようになっています。
こちらはシンプルなデザインが特徴の、後付けリフォームが可能なモダンスタイルの庇です。軒先に向かって細くシャープなデザインになっていて、洗練された印象の外観デザインを作ることができます。
こちらは、ボリューム感のあるベーシックスタイルの庇です。軒先に厚みがあるので程よい存在感があり、さまざまなデザインの住宅に合わせやすい形状です。
こちらの製品もアルミ製ですからメンテナンスはとても楽。カラーはブラウン、カームブラック、ピュアシルバー、マットステン、ホワイトの5種類が揃っています。外壁やサッシの色とコーディネートして選びましょう。
窓庇は外観のアクセントともなるものです。機能面だけでなく、我が家の外観をより美しく引き立てるデザインを選び、取り付け方にもひと工夫しましょう。
窓が2つ以上並んでいる場合は、窓の上部に通しで取り付けると統一感のある外観デザインになります。
窓が南面や西面にある場合は、庇に日よけシェードを取り付けるアイデアもあります。こちらはオプションで洋風すだれ「アウターシェード」を取り付けることができる庇です。
庇だけでは低い位置からさす夏の強い朝日や西日を遮るのは難しいもの。日よけシェードがあれば、日射熱をしっかり遮ることができるようになるので、家の中の涼しさを保ちやすくなり、さらに快適で省エネな住まいになります。
小窓には小さな窓庇を取り付けましょう。こちらは幅15㎝、出幅10㎝の小さなサイズから揃っている窓庇です。小さくても雨水を防ぎやすくなるので、窓や外壁の汚れを軽減してくれる効果が期待できます。
窓庇の取り付けリフォームの際の注意点
窓庇の取り付けリフォームを行う際には、強固な下地にしっかりとビス留めを行う必要があります。構造や外壁材の種類によっては取り付けができない場合があります。
また建物の屋根雪が直接落ちる場所には取り付けない、製品によっては2階建てまでしか取り付けできないものもあるので、リフォーム会社とよく相談をしながら進めましょう。
窓庇は日本の気候で快適に暮らすための家づくりの知恵のひとつ。上手に取り付けて、毎日を快適に、便利にお過ごしください。
アウターシェードなど効率よく暑さを防ぐ日よけの取り入れ方は下記でご紹介していますのであわせてご覧ください。
また後付けリフォームができるおしゃれな玄関庇は下記でご紹介しています。
著者プロフィール
Yuu(尾間紫)
一級建築士/インテリアプランナー/インテリアコーディネーター/マンションリフォームマネジャー
長年リフォーム業界の第一線で、数多くの住宅リフォームの相談、プラン設計、工事に携わってきた経験から、本当に価値あるリフォームについて皆さまにお話します。過去を繕うものではなく、未来の暮らしを創る「リライフのリフォーム」を提唱。実践的なリフォームのノウハウを、テレビや雑誌、新聞連載、講演などを通して発信中です。著書に『リフォームはこうしてやりなさい(ダイヤモンド社)』など。Webサイト「リフォームのホント・裏話」(http://www.ne.jp/asahi/net/rehome/)でリフォームの実践的なノウハウを公開中