日本では古くから暑い夏を涼しく過ごす工夫がなされてきました。スダレやよしず、緑のカーテンがあれば、エコに涼しく過ごせます。今回は、スダレやよしずの上手な使い方と、現代の家に取り入れる際にあると便利なアイテムをご紹介します。
家の作りは夏を旨(むね)とすべし、古くから使われてきたスダレやよしず
日本では古くから、蒸し暑い夏を涼しく過ごすための様々な工夫がなされてきました。徒然草にも「家の作りやうは、夏をむねとすべし」と書かれてあるように、住まいづくりの中にも暑さ対策の知恵が各所に見られ、現代においてもそのエッセンスが数多く継承されています。
中でも見習いたいのが、スダレやよしずを使った暑さ対策の方法です。共に日陰を作りながら風通しよく暮らせるので、庶民の間で手軽な暑さ対策のアイテムとして重宝されてきました。
スダレとはロールスクリーンのように巻き上げたり下ろしたりして使うもので、もともとは竹を細く割いて編んだ目隠しでした。奈良時代から存在し、語源は巣の前に垂らすからとも、簀(す=隙間があるもの)を垂らすからとも言われています。当初は高貴な人のお姿を隠すために使われていたようです。
それから時代は過ぎ、庶民の間でもスダレが使われるようになりました。その際は、高価な竹ではなく、安価な葦(あし)を用い、窓の外や軒先に吊るして日よけとして、また部屋と部屋の間に吊って間仕切りとしても使われていました。
スダレは縦方向に立てかけて使うこともあり、これは縦すだれと呼ばれました。その中で特に葦(よし)で編まれたものをよしずと呼ぶようになり、竹より安価で手軽なため、日よけとしてよく使われてきました。
このようなスダレやよしずを使った暑さ対策の方法は、太陽からの熱を遮ることで暑さを防ぐ「遮熱」の考え方に基づいたものです。これは現代における住宅設計の手法と共通するものですから、今の時代にも十分に効果があります。
サステナブルであることが重要な今の時代だからこそ、古人に見習ってスダレやよしずを上手に取り入れて、毎日をエコに気持ちよく過ごしましょう。
スダレやよしず、緑のカーテンがあればエコに涼しく過ごせる
暑さを防ぐためには、家の外側から窓全体を覆って日陰を作ることが重要です。スダレは窓の内側に吊るすこともできますが、窓の外側に取り付けた方が効果が高くなります。窓そのものが暑くなってしまうと、室温を上昇させてしまい、冷やすのに時間とエネルギーが必要になるからです。
またスダレやよしずは風を通してくれるのが嬉しいところです。窓を開け放って換気をする際も、日よけをしながら風が通り抜けてくれます。
さらに昔の人は、スダレやよしずに水を掛けることで、その効果を更に高めていました。これは水が蒸発する際に、気化熱によって周囲の熱を奪って涼しくすることを利用したものです。
このような暑さ対策を自然の力で行ってくれるのが緑のカーテンです。緑のカーテンとは、ゴーヤなどのつる性植物を窓の外に植えて日かげを作り、植物の保水効果による気化熱で涼しい環境を作るものです。ゴーヤはプランターでも栽培でき、緑のカーテンはへちまなどでも作ることができます。
横浜市環境科学研究所の調査では、南面の窓の外側に8平方メートル程度の緑のカーテンを作れば、7月~9月の3か月間でエアコン1台分(8畳用)を毎日1時間~1.5時間程度を稼動させる場合とほぼ同等の効果があるとしています。
ほかにも壁面の温度を10度ほど下げるというデータもあるなど、緑のカーテンは驚くほど暑さを防ぐ効果があるのですね。もちろんスダレやよしずと同じように風通しがよく、家の中から見える光景も緑がいっぱいでとても爽やか。またゴーヤやへちまには、実った後に食べたり、垢すりに利用したりといった楽しみもあります。
現代の家に取り入れるにはちょっとした工夫が必要、あると便利なアイテム
このようなスダレやよしず、緑のカーテンづくりをする際には、住まいにちょっとした工夫をしておくと便利です。
古い時代の家は、軒先が長く伸びていて、また外壁や軒裏などが木でできていたので、これらのものを留める際にも、直接釘を打って簡単に取り付けることができました。
しかし現代の家は、軒先が昔より短いため留めるところが無く、また外壁や軒裏に自分で勝手に穴を開けるのは防水上の不安があります。
そこで活躍してくれるのが、窓の上に取り付けるバーです。例えば、この写真のバーはアルミ製で錆に強く、シンプルなデザインなので、住まいの外観の美しさを損ねることはありません。
これなら、スダレやよしずをすっきりと取り付けることができ、また緑のカーテンを作る際もネットをしっかりと取り付けることができるので、倒れる心配がなく便利です。
窓の上のバーは、アイデア次第で様々な用途に使うことができます。
例えば、干し柿を吊るしたり、魚を干して手作りの干物を作ったりするのも楽しそうです。最近人気の干し野菜も、網に入れてバーに吊るして干しておけば、虫や動物に狙われる心配もなく、うま味たっぷりの美味しい野菜が食べられます。アウトドア用のタープを取り付けて、お庭でキャンプをするのも楽しいですね。
スダレが風に揺れる風景は万葉集にも歌われています。夏を涼しく過ごす知恵は電気の無いはるか昔の時代からあったもの。窓の上の小さな工夫で、涼しくしたり、手づくりの料理を楽しんだり。我が家ならではのアイデアで、快適な毎日にしましょう。
著者プロフィール
Yuu(尾間紫)
一級建築士/インテリアプランナー/インテリアコーディネーター/マンションリフォームマネジャー
長年リフォーム業界の第一線で、数多くの住宅リフォームの相談、プラン設計、工事に携わってきた経験から、本当に価値あるリフォームについて皆さまにお話します。過去を繕うものではなく、未来の暮らしを創る「リライフのリフォーム」を提唱。実践的なリフォームのノウハウを、テレビや雑誌、新聞連載、講演などを通して発信中です。著書に『リフォームはこうしてやりなさい(ダイヤモンド社)』など。Webサイト「リフォームのホント・裏話」(http://www.ne.jp/asahi/net/rehome/)でリフォームの実践的なノウハウを公開中