雨や雪、紫外線や汚れなどから大切な車を守ってくれるカーポート。エクステリア工事の中でも占める面積が大きく、建物全体のデザインの点でも大きく左右する存在です。さらに、設置には数十万円の費用がかかりますし、柱を地中でコンクリート基礎に固定して埋めていることから設置後の変更などとやり直しが大変難しく、絶対に失敗したくない工事です。
そこで、今回の記事ではカーポートの設置に失敗や後悔をしない為に、カーポート位置を決定する前に知っておきたいチェックポイントを5つご紹介していきます。
目次
1. カーポートの柱位置は邪魔になりませんか?
カーポートには必ず柱が必要です。この柱の位置や大きさを考えずにカーポートを設置してしまうと…扉の開閉の妨げになったり、アプローチの途中に柱が建ったり、そもそも駐車しにくい!なんてことに。
カーポートのデザインや色、大きさばかりに気を取られて、柱の位置を把握していなかったということが結構あるんです。
柱が邪魔な位置に来る場合は「梁延長仕様」のカーポートを選びましょう。
柱の位置を自由自在とまではいきませんが、フレキシブルに動かすことができます。
柱の位置に悩まされたくない方には、柱が後方にあるタイプのカーポートをおすすめします。車の出入庫のしやすさは格段にアップしますよ。
また、一般的なカーポートの大半は基本の柱位置から前後に100mm以内でしたら移動することが可能です。あと少しの移動で何とかなりそうな場合は、ぜひ検討してみてくださいね。
2. 玄関ポーチからの目線を考慮されていますか?
駐車場から玄関までなるべく雨で濡れたくないと考える方に人気のカーポート設置場所が玄関前。雨が降っていなくても車から玄関までが近いと何かと便利ですし、選ぶカーポートによっては玄関周りのデザイン性がアップする効果も期待できます。
メリットの多い設置場所ではありますが、1点注意が必要です。
それは、玄関ポーチに立った時の目線。敷地と前面道路に高低差がある場合、玄関ポーチに立った時の目線上にカーポート屋根のラインが被ることがあり、圧迫感を感じさせる原因となります。
カーポートと玄関の位置が近いと、背の高い方がポーチ階段を降りる際に屋根に頭をぶつけてしまう可能性もありますので特に注意が必要です。
対策としては、条件に合わせてカーポートの高さを変更することが有効です。カーポートは種類にもよりますが、上図のように3段階の高さ設定があります。
通常は駐車する車種によって選択するものですが、今回のケースのように玄関ポーチ前にカーポートを設置する際にも屋根の高さをしっかりとチェックするようにしましょう。
3. 建物の窓は開きますか?
住まいの間取りがある程度決定したら、大まかでもいいのでエクステリアのゾーニング及びカーポート位置を考えてみるようにしましょう。
なぜなら、意外と上図のようになっていることが多いからです。
上図Aのようになっている場合、カーポートより窓が低ければきちんと窓を開けることができますが、窓と屋根の高さが被るとカーポートに当たってしまうことになります。
そうなるとカーポートの奥行を短いものに変更したり、長さをカットするという手間と費用が発生することになってしまいます。
上図Bの場合は、窓前にカーポートの柱が来てしまっていますので窓を開けることができません。
「1.カーポートの柱位置は邪魔になりませんか?」でも記載したように、カーポート柱の移動で回避できるかの検討が必要となります。
上図A、Bいずれの場合も「開き窓でなければ良いのでは?」というお声が聞こえてきそうですが…。
たとえ引違い窓であったとしても、窓越しに常にカーポート屋根のラインや柱が見えると、圧迫感がありますし景観的にも美しいとは言えませんよね。
そうならない為に必要なのが、最初に書いたように住まいの間取りがある程度まで決まった段階でエクステリアのゾーニング及びカーポート位置を考えてみること。エクステリア計画を早い段階から意識することが大切です。
4. 建物外壁に計画している照明との兼ね合いは?
安心・安全や防犯、またはわが家を美しくライトアップする為に、住まいの外壁には意外とたくさんの照明器具が設置されているもの。
カースペースに隣接する外壁にあらかじめスポットライトを取り付けたという方も多いのではないでしょうか。夜間の駐車時に明かりがあると便利ですものね。
ですが…その照明の取り付け高さは、大丈夫でしょうか?
カーポート屋根の高さと同じ、もしくは屋根の上側に照明がきていませんか?
屋根の高さと同じだと器具と当たってしまう可能性がありますし、屋根の上側に照明がきてしまうとせっかくの明かりがカースペースまで届きません。
これは見逃しがちですが、割とよく聞く話しなんです。
新築時は建物の設計にばかり気を取られてしまいますが、エクステリアも早い段階から気に掛けることがこういったミスの防止に繋がりますよ。
5. 雨水・汚水桝や水道メーターの位置を把握していますか?
駐車スペースになり得る場所に設置されていることが多いのが「量水器」いわゆる水道メーター、雨水や汚水等の枡、地域によっては浄化槽が設置されている場合も。
これらの位置とカーポートの柱の位置関係を明らかにしておかないとお互いに干渉してしまい、思った場所にカーポートを取り付けることができない!といった事になりかねません。
これらのメーターや枡は地中でパイプによって繋がっています。
表面的には干渉を避けられたと思っていてもいざ工事を始めてみると地中にパイプが埋まっていて余計な費用がかかってしまった…
なんてこともありますので、あらかじめ配管経路もしっかりと確認しておくようにしましょう。
また、水道メーターは定期的に検針が行われます。検針器具が届かないほど車の真下に隠れてしまったり、タイヤで踏んでしまうような場所にあると検針のたびに車を移動するなどの手間が発生してしまうことになります。
メーターの位置は変更ができる場合もありますのでプロに確認するようにしましょう。
6. カーポートの設置に失敗しない為に…一番大切なこと
ここまで、カーポートの設置に失敗しない為の5つの注意点をお話ししてきました。
それぞれの項目で回避するためのポイントもお話ししましたが、私が考える何よりも大切な事、それは『カーポートの位置をしっかりと図面に落とし込む』です。
「カーポートは後からでも付けることができるから…」と、考えることを後回しにしていませんか?
または、インターネットでカーポートだけを取り付ける業者に依頼して、現場調査や図面も無しに工事を進めようとしていませんか?
それが失敗や間違い、費用追加の原因です。
設置しようと思う場所が決まったら、図面上にカーポートをカタログに掲載されている正確な寸法で記載してみましょう。
そうすれば、「あれ?柱の位置が悪いな。」「お風呂の窓が開かないぞ!」「この水道メーターが邪魔になりそうだなぁ。」など、本記事でご紹介した注意点にもすぐに気付く事ができるはずです。
著者プロフィール
山岡由佳 クラスデザイン代表
二級造園施工管理技士、一級エクステリアプランナー
京都府立大学 人間環境学部 環境デザイン学科を卒業後、E&Gアカデミーにてエクステリアとガーデンを専門的に学ぶ。 エクステリアとお庭の専門店にて15年、ランドスケープデザイン設計事務所にて2年の実績と経験を積み、 2020年に独立し「cras design(クラスデザイン)」を設立。 個人宅向けの外構造園設計や施工店への作図サービスを中心にSNS運用サポートやブログ執筆サービスも行っており、 様々な視点から役立つ情報をお届けしています。