バリアフリーな家にするには、家の中だけでなく、家からの出入りをスムーズにすることも大切です。今回はバリアフリーになるのはもちろん、家事がラクになったり、庭での時間がもっと楽しくなったり。更には外出もしやすくなるなど、毎日の暮らしを便利に安全にしてくれるウッドデッキの活用法をご紹介します。
目次
バリアフリーは家の中だけじゃない!家の出入りをしやすい工夫も
バリアフリーな家づくりの中でも特に配慮をしたいのが床の段差です。高齢者や車いすの人、小さな子供、妊娠中の人はもちろんのこと、足腰に自信がある人でもちょっとした油断でつまずいて大けがをしてしまうことがあります。
意外と忘れがちなのが、段差は家の中だけではないということ。なかでも家の内部の床の高さと、外部の地盤面の高さの違いは大きく、この段差によって行動が制限されてしまうことがあります。
家の床は、地面からの湿気で床が腐らないよう、周囲の地盤面よりも高く作られています。建築基準法では、特別な措置をした場合を除き、木造の床は直下の地面からその床の上面まで45㎝以上とするように定められています。
つまり、家の出入り口には必ずと言っていいほど段差があるということ。階段にすると2~3段分に相当する高さがあります。
多くの家では玄関ドアの前にポーチが作られていて、そこで1段~2段、玄関のたたきから床に上るのに1段と、2~3段分の段差を上って家に入ります。そしてこの段差が、足腰が弱った時や、車いす使用者には、家を出入りする際の大きな障害になるのです。
また、家の中から庭に出る時にも同じように段差があります。そのままでは相当大きな段差なので、洗濯物を干すのにもひと苦労。更に庭の中にも段差があれば、家の中と同じように危険があります。
バリアフリーな家にするためには、家の中だけでなく、家の出入りのしやすさや、庭で過ごす時間を安全にするための対策も必要です。そしてその際にはウッドデッキが大いに役立ってくれるのです。
リウッドデッキで内外の段差を解消、庭に出やすくなり活動範囲が広がる
庭への段差を比較的手軽に解消してくれるのがウッドデッキです。家の中の床の高さに合わせて設置をすることで、庭への出入りをスムーズにしてくれます。
こちらの写真は、グレイッシュなカラーのリウッドデッキです。リウッドデッキとは、木の粉と樹脂を主原料としたリウッド(再生木)で作られたウッドデッキのこと。再塗装や防腐処理が不要で高耐久なので、美しさが長持ちします。
こちらの写真は、下レールの段差が小さく、つまずき防止や車いすでの出入りがしやすいノンレール引き違い窓の足元部分です。リウッドデッキと組み合わせることで、ほとんど段差なく庭への出入りができるようになります。
実際に、庭にウッドデッキを設置して出入りをしやすくしたおかげで、これまでほとんどを家の中で過ごしていた高齢者の方が、庭に出るようになり活動的になったケースもあります。
また庭に洗濯物を干す際にも、たくさんの洗濯物を抱えたまま段差を降りるのは意外と大変です。ウッドデッキで段差を解消しておけば、洗濯物干しがスムーズになるなど、家事を楽にしてくれる効果もあります。
庭への大きな段差は、物理的な面だけでなく、精神的な面でも大きなハードルになります。内外の段差を解消しておけば、家族全員が庭に出やすくなり、行動範囲が屋外へと大きく広がることでしょう。
スロープ付きのリウッドデッキなら外出もしやすくなる
スロープ付きのリウッドデッキを使って、外出をしやすくするプランもあります。
玄関から出入りをするとなると、床からたたきへ、玄関ドアを通ってポーチの段差を降りて、と様々なハードルがあります
そんな時は、リビングや和室の大きな掃き出し窓から段差なくウッドデッキの上に移動。そのままスロープでカーポートやエントランスに進めるように計画すれば、車いすでの外出がスムーズになります。
ウッドデッキは家の内と外を繋ぐ中間的な存在です。上手に使えば、外出がしやすくなり、行動範囲は更に大きく広がることでしょう。
ウッドデッキを選ぶ際には、安全性とメンテナンス性に要注意
バリアフリーに大いに役立つウッドデッキは、庭の中の段差解消にも役立ちます。庭に傾斜や段差がある場合、ウッドデッキを設置することでフラットな床面にすることができます。
フラットな庭は安全性が高いのはもちろん、庭を広く使うことができるので、子どもたちものびのびと遊ぶことができるようにもなります。
その際には、より安全性を高めるよう、ウッドデッキの作りにも配慮をしましょう。
まずはデッキ間のスキマの確認です。スキマが大きすぎるとつまずきの原因となり、車いすの車輪が引っかかりやすくなります。またスキマからカード類などを落としてしまうと、拾い上げるのが難しくなります。
こちらの写真はリウッドデッキの目地部分を拡大したところです。安全性に配慮をしてスキマは3mm以下になっていて、カードなどが下に落ちない構造をしています。また天然の木と違ってささくれがないため手をついても安全性が高いのが特徴です。
メンテナンス性にも注意が必要です。一般的な木材で作ると腐食をしやすく、塗装や補修などに手間と費用が掛かります。腐食してしまえば、ぐらついて危険なことも。さらにウッドデッキは紫外線や風雨に常時晒されています。耐久性が高くメンテナンスが楽な製品を選ぶことが肝心です。
ウッドデッキを上手に使えば、家の中だけでなく家の外へも行動範囲が広がり、暮らしやすいバリアフリーな家にできます。上手に活用して、更に安全に快適にお過ごしくださいね。
著者プロフィール
Yuu(尾間紫)
一級建築士/インテリアプランナー/インテリアコーディネーター/マンションリフォームマネジャー
長年リフォーム業界の第一線で、数多くの住宅リフォームの相談、プラン設計、工事に携わってきた経験から、本当に価値あるリフォームについて皆さまにお話します。過去を繕うものではなく、未来の暮らしを創る「リライフのリフォーム」を提唱。実践的なリフォームのノウハウを、テレビや雑誌、新聞連載、講演などを通して発信中です。著書に『リフォームはこうしてやりなさい(ダイヤモンド社)』など。Webサイト「リフォームのホント・裏話」(http://www.ne.jp/asahi/net/rehome/)でリフォームの実践的なノウハウを公開中