庭に目隠しが必要な理由は、庭で過ごすときのプライバシー確保のためだけでは無いはずです。在宅時に大半の時間を過ごす室内にいる時間が、よりリラックスできる心地よいものになるように、邪魔な景色は隠したいとか外からの視線をコントロールしたい場合の対策が多いのではないでしょうか。特にリビングは家族のくつろぎの部屋、ダラダラしたりゴロゴロしたり自由でいたいものです。
どこからの視線が気になるかは、個々の住宅や周囲の環境によって変わる部分もありますが、高さの基本的な考え方は同じです。そして、リビングでの過ごし方も住まう人によって異なります。目隠し計画にかかわる部分は、ソファに座って過ごすか床座なのかということ。今回はこのインテリアの違いによって変わる目隠し高さについて解説していきます。
1.ソファー派・床座派で違う、必要な目隠し高さ
リビングのインテリアはソファーですか?それとも床座ですか? ソファーがあるけどソファー前の床に座っていることが多いという方もいるかもしれませんね。そんな方でもソファーに座ることもあるはずなのでソファー派と考えてください。床座とソファーで視線の高さはどれくらい変わるでしょう。
大体40センチくらいの差が生まれます。必要な目隠し高さを考えたとき、床座の方が低くて良いということ。目隠しフェンスなら40センチ違うとコストも随分変わってくるので、必要な最適サイズを検討したいところです。
ソファー座にしても床座にしても立ち上がった時は同じ目線になります。部屋の中で動いている時も敷地外に視線が抜けない方が良いなら、インテリアに関係なく立ったときの視線高さを考慮する必要があります。しかし、目隠しの背が高くなる分コストも上がります。目隠しとコストの最適解を見つける方法として、動いている時は気にならないと考え、座ってくつろぐときの視線をしっかりコントロールするという選択をお勧めすることも多いです。しかし、これが正解と一概に言えるわけではなく、個々に違う周囲環境を考慮して検討する必要があります。
2.ソファー派の目隠し
ソファーに座ったときには、どれくらいの目隠しが必要でしょうか。視線の高さを見てみましょう。
ソファーに座った高さで考えるとH1.8mの目隠しがあれば、外に視線は逃げなくなります。この高さは目隠しフェンスの標準規格でバリエーションが多いサイズ。インテリアや建物外観に合わせたコーディネートもしやすいと思います。
デザイン的にスッキリと収めるには、地面から上部まで同じ素材で統一された壁であること。ナチュラルだったりモダンだったり作りたいイメージに合わせて、目隠しフェンスの色や格子デザインを選びます。
コストを抑える方向のデザインにするならコンクリートブロックとフェンスを組み合わせます。コンクリートブロックの上に施工可能なフェンスの最大高さは1.2mが一般的。コンクリートブロックを地面から0.6m積んだ上に高さ1.2mのフェンス選んで目隠しの壁にします。
ブロックとフェンスは出来るだけ一つの壁に見えるような配色を選ぶとセンス良くまとまります。
3.床座派の目隠し
床座では、どれくらいの目隠しが必要でしょうか。視線の高さを見てみましょう。
床座ならH1.4mの目隠しがあれば、外に視線は逃げなくなります。壁面はフェンスではなくコンクリートブロックで作ることも可能ですが、H1.2mより高くなると控え壁が必要になり庭にデッドスペースが生まれます。そのためH1.2mを超える高さの壁が必要なときは、コンクリートブロックとフェンスを組み合わせることが多くなります。
出来るだけ一体感のある壁面を作るならコンクリートブロックは最小限にし、上部に設置するフェンスを最大高さの1.2mを選ぶと良いでしょう。足元に植栽を植えればコンクリートブロックは緑で隠れて気にならなくなります。
4.周囲との関係性と組み合わせて考える
ソファー派と床座派それぞれの高さを念頭に目隠しフェンスを設置する場所の、その向こう側を見てみましょう。隣地の建物があったり道路があったり、遠くの景色が見えていたりと環境は様々です。隣地や道路からの視線は、敷地との高低差で状況が大きく変わります。コンクリートブロックやフェンスでは遮ることができない高い位置から見下ろされるような視線もあります。電柱が視界に入って、どうしても景色の邪魔をすることもあります。
コンクリートブロックとフェンスという構築物で囲うだけでは、不十分な条件の場合は、植栽の力を借りましょう。
コンクリートブロックとフェンスだけでは高さが足りない部分に、樹木を植えて見える範囲をコントロールします。均一的にフェンスで囲い込むより景観に変化が生まれ、魅力的な景色を作ることもできます。
それぞれの場所の最適解は、その場の環境と住まう人の趣向で変わります。それが個性となって表現されて我が家らしい、くつろげる空間が作られていきます。
著者プロフィール
冨田ちなみ Gokansha(ゴカンシャ)
個人住宅の庭・外構や店舗のエントランスガーデンなど、あなたのライフスタイルに調和する外空間のデザインするGokansha(ゴカンシャ)代表。二級建築士、インテリアコーディネーター、二級造園施工管理技士、福祉住環境コーディネーター、園芸療法リーダー二級、ハーブコーディネーターなど様々な資格を持ち、建築士でもあるため住宅目線・エクステリア目線・ガーデン目線、それぞれの記事を発信いたします。E&Gアカデミー講師。