暑い夏で気になるのがクーラーの電気代。ちょっとした住まいの工夫で、電気代を節約しつつ快適に過ごすことができます。お手本は「パッシブハウス」です。今回は窓まわりや庭の工夫で毎日を心地よく暮らせる!クーラー以外で部屋を涼しくする方法をご紹介しましょう。
電気代を節約しながら快適に暮らせる家とは?お手本はパッシブハウス
暑い夏、気になるのがクーラーの電気代。しかし最新の高性能住宅はとても快適で、光熱費が安く済むようになっています。
その代表ともいえるのが「パッシブハウス」と呼ばれる、エネルギー消費を極力抑えつつ、快適に暮らせる設計技術を駆使した家。高度な技術によって自然のエネルギーを上手に利用したり、遮ったりすることで、室内を快適に保ち、省エネなので電気代が安いのが特長です。
正式に「パッシブハウス」の認定を取るためには厳しい基準をクリアする必要がありますが、このような機械に頼り過ぎることなく、自然エネルギーを上手にコントロールして快適化する方法を「パッシブデザイン」と呼び、その要素を取り入れることで住まいを快適化できます。
今回は、「パッシブデザイン」のアイデアから、手軽に取り入れやすい「クーラー以外で部屋を涼しくする方法」をご紹介しましょう。
クーラー以外で部屋を涼しくする方法とは?窓まわりや庭にひと工夫
涼しい家にするために、まずは暑さの原因となっている日射熱のコントロールをしましょう。クーラー以外で部屋を涼しくする大きなポイントは日射熱を遮ることにあり、遮り方によってその効果が変わります。
暑さの原因となっている日射熱を遮る
夏の暑さの原因となっているのは、太陽からの日射熱です。太陽光は莫大な量の熱を地球へ運んでいて、その熱が建物や地面に吸収され、周囲の温度を跳ね上げます。特に夏は、軌道の関係で日射熱が強くなり、暑さを感じやすくなります。
炎天下に置いてある車の中の温度が50度を超えてしまうほど熱くなるのも、この太陽光が運んでくる日射熱が原因。太陽光が当たらない日陰だと、そこまで温度は上がりません。つまり暑さを防ぐためには、この日射熱をしっかりと遮ることが重要になります。
効果が高いのは窓の外側への日よけの取り付け
部屋を涼しくするためには、カーテンや日よけ、シャッターなどで窓を覆い、室内に日射熱を入れないことが肝心です。
その際に効果が高いのは、窓の外側に日よけを取り付けること。窓全体を日陰にすることで、より日射熱を防ぎやすくなります。
窓に何もつけない「遮蔽なし」の場合のエアコンの稼働率を100%とした場合、室内側にカーテンをつけた場合の稼働率は74%、室外側に日よけをつけた場合の稼働率は33%まで下がるというデータも。
マンションの場合、室外側は共用部となるため、室内側へ取り付ける必要がありますが、一戸建ての場合は窓の外側に日よけの工夫をすることで、電気代を節約しながら部屋の涼しさを保ちやすくなります。
日よけの取り付けは意外と簡単です。後付けしやすい製品が数多く揃っていますので、わが家の窓の状況に合わせて選びましょう。
人気はロールスクリーンタイプのシェードです。おしゃれなパラソルのようなオーニングもあります。他にもひさし(庇)を取り付けたり、雨戸をスリットシャッターに交換したり。手軽なリフォームで、エアコンの稼働率を下げて、エコで快適な暮らしができるようになります。
風通しをよくする窓の工夫、自然に風が流れる工夫
風を感じると体感温度は下がります。夕方になり気温が下がってきたら、風通しよくして快適に過ごすのもいいでしょう。風通しの基本は、風の入口と出口を向かい合わせに作り、その間をスムーズに空気が流れるようにすること。
1部屋の中で風通しをよくするのが難しい場合は、室内ドアを開けて家全体での風通しを考えましょう。温かい空気は上に流れるので、2階の廊下の窓を開けるなどして、1階から2階へ空気が流れる道筋を作る方法もあります。
2階の窓が開かないFIXの場合は、開く窓に変える手も。カバー工法を使えば、外壁や壁紙の補修は不要で、半日で交換リフォームが可能です。
風通しをよりよくするデザインの窓もあります。コロナ禍で換気のしやすさに優れた窓ということで一躍注目を浴びた「ウインドキャッチ連窓」です。こちらもカバー工法なら引き違い窓から手軽に交換が可能。窓が1か所の部屋でも風通しよくすることができます。
クーラーに頼り切らず、夏を涼しく過ごすために植物の力を借りるのも効果的です。
植物を植えて木陰を作ったり、グランドカバー植栽の蓄熱のしにくさと蒸散作用で地盤面の温度を下げたり。植物を上手に使って快適化を図るのもパッシブデザインのアイデアのひとつ。
緑のカーテンを窓の外で育てることで、日射熱を防ぐ効果と、蒸散作用の効果のあわせ技により、クーラーの稼働時間を減らしてエコな暮らしができます。木々の間をすり抜けて入ってくる風は気持ちのいいもの。ぜひ、植物の力を活かした庭づくりを考えてみてください。
高断熱・高気密で四季を通じて快適に、家全体を見直す機会も
住まいを快適にするためには、遮熱や通風、植物の力を借りるなど、自然をコントロールすることに加えて、高断熱・高気密な家であることも必要です。
高断熱とは温かさや冷たさを維持しやすい保温力が高い家のこと、高気密とは空気が流れだすスキマが小さい家を指します。
せっかくクーラーで冷やした空気や、冬に暖めた空気が流れ出てしまえば、ロスが大きくなります。特に熱の出入りが大きいのが窓まわり。
窓のリフォームは手軽にできる時代。窓を変えるだけでも夏も冬も快適に近づきます。家の快適化や省エネ化を検討する際には、こういった窓の断熱性能面にも目を向けて家全体を見直してみることをおすすめします。
窓まわりや庭などの住まいの工夫でクーラーに頼りすぎることなく家づくりは可能です。もちろん無理は厳禁ですから、熱中症にならないよう適宜クーラーを使いつつ、
日射熱を遮ったり、日よけ、風通し、植物の自然の力など、クーラー以外でも部屋を涼しくする住まいの工夫をして、省エネで快適な毎日を心地よく暮らしてくださいね。
著者プロフィール
Yuu(尾間紫)
一級建築士/インテリアプランナー/インテリアコーディネーター/マンションリフォームマネジャー
長年リフォーム業界の第一線で、数多くの住宅リフォームの相談、プラン設計、工事に携わってきた経験から、本当に価値あるリフォームについて皆さまにお話します。過去を繕うものではなく、未来の暮らしを創る「リライフのリフォーム」を提唱。実践的なリフォームのノウハウを、テレビや雑誌、新聞連載、講演などを通して発信中です。著書に『リフォームはこうしてやりなさい(ダイヤモンド社)』など。Webサイト「リフォームのホント・裏話」(http://www.ne.jp/asahi/net/rehome/)でリフォームの実践的なノウハウを公開中