窓からはじめる庭のレイアウト、位置、高さ、用途から考える心地よい庭づくり

庭づくりを考えるにあたって、室内との関わりは大切なポイントのひとつです。
そして、庭と室内をつなぐ役割を担っているのが窓の存在です。

掃き出し窓を通じてリビングの延長のように庭で過ごす、キッチンに立ちながら、ふと窓の外の緑に目をやる、玄関を開けたときに正面に見える印象的な庭の景色に心が安らぐ…というふうに、私たちは毎日の暮らしの中で様々な窓を通して庭とつながっています。
今回は窓を起点に考える心地よい庭づくりについてご紹介します。

1.窓から考える庭づくりのチェックポイント

窓との関係から庭のレイアウトを考えるとき、必ずしも窓の中心を庭の中心と考えればよいわけではありません。
心地よい庭づくりのためにはどんな視点が必要になるのでしょうか。

1 暮らしの目線から考える

庭のプランを考える際にまず確認したいのは、庭をどこから眺めるのかということです。
例えば、ひとつながりのリビングダイニングの中でも、リビングのソファに座っているときとダイニングテーブルで食事するときでは、視線の高さが異なります。
キッチンの窓であれば、多くの場合は立った状態で庭を見ることになるでしょう。

シーンごとの目線の高さや見る方向により見える範囲は異なり、その印象も変わってきます。
場合によってはせっかくつくり込んだ部分が死角になって見えないようなことも考えられます。
庭の見せ場をどこに置くかは、「ここに座ったときにこんな景色が見えるといいな」というふうに、家具の配置や室内での過ごし方など、実際の暮らしに合わせて考えてみましょう。

窓からはじめる庭のレイアウト、位置、高さ、用途から考える心地よい庭づくり

暮らしの中での目線の高さ。
※家具の高さや身長によっても変わるので、数値は目安として

2 周辺環境を確認する

掃き出し窓のように大きな窓は開放感があり、室内に光や風を取り込んでくれます。
一方でその分、屋外の景色を大きく取り込むことにもなります。
窓の外には庭だけでなく隣家や道路があって、外からの視線が気になったり、景観上目に入れたくないものまで見えてしまう場合もあります。
窓の外にどんなに素敵な庭があっても、外からの視線が気になる環境ではシャッターを閉めたままになりがちで、そうなると室内と庭とのつながりは絶たれてしまいます。

隣家の窓の位置、物置、エアコンの室外機、給湯器などの生活に必要ではあるけれど美観上あまり見せたくないもの、道路との関係など、庭の要素だけでなく、窓から何が見えているか、生活の目線と外部の環境とを併せて確認しておきましょう。
必要な場所にスクリーンフェンスや壁、アイストップとなる植栽など適切な目隠しを取り入れることで庭の完成度がより高まります。

窓からはじめる庭のレイアウト、位置、高さ、用途から考える心地よい庭づくり

壁と植栽で視線を遮ることで大きな窓の開放感が感じられます。

3 生活パターンから考える

窓の用途や生活動線、その部屋で過ごす時間帯など、実際の暮らし方も庭のレイアウトを考えるうえで大切なポイントです。

掃き出し窓ならウッドデッキやタイルテラスで室内との段差を少なくすれば、庭との行き来がしやすくなり、動線がよくなって自然と庭で過ごす時間が増えます。
洗濯物を干すなら屋根を設ける、夜間に過ごすことの多い部屋なら庭にも照明も備えておくなど、具体的な過ごし方をイメージすると、庭に必要な設備も明確になってきます。

窓からはじめる庭のレイアウト、位置、高さ、用途から考える心地よい庭づくり

YKK AP「プレーンルーフテラス」
ウッドデッキで段差が解消され、屋根があって天候に左右されない快適なスペース。

4 植物の生長を考慮する

心地よい庭づくりのためには植栽を効果的に取り入れたいものです。
窓との関係を考えた場合、植物の生長によって室内から見える景色も変化していきます。

生長の早すぎる樹木の場合、植えたときにはちょうどよいボリュームの緑でも、数年後には枝葉が窓からの景色を遮ったり、幹しか見えなくなってしまったというようなことも考えられます。
樹種や樹形、サイズ選びの際には、植えたときの状態を完成と考えるのではなく、将来的にどのくらいの高さになるのか、枝葉がどのように広がるのか、剪定で大きさをコントロールできるのか、といったことも確認しておくと安心です。

また、植物には日々のメンテナンスが欠かせません。
2階の窓からも見えるようにと建物近くに背の高い木を植えたものの、お手入れの手が届かなくなってしまった、狭い場所に坪庭をつくったらメンテナンスに入りづらくいつの間にか荒れてしまった、ということもあり得ます。
植栽の計画の際には、剪定や掃除のための動線や作業スペースの確保も併せて考えておきましょう。

窓からはじめる庭のレイアウト、位置、高さ、用途から考える心地よい庭づくり

2. 暮らしのシーンに合わせた庭づくり

ここからは、実際の生活の場面をイメージしながら庭と窓の関係を考えてみましょう。

① リビングの掃き出し窓は「眺める」と「使う」を一緒に考える

リビングやダイニングの掃き出し窓に面した庭は、景色を眺めるとともに、そこで過ごす楽しみの多い場所です。
そんな「過ごす」庭の魅力を十分に楽しむために大切なのは、まずは庭に出やすい動線と、視線を気にせずカーテンを開けて過ごせる居心地のよい環境をつくることです。

掃き出し窓の外にウッドデッキやテラスを設ければ、室内と庭の段差がやわらいで庭へ出やすくなり、アクセスがよくなれば庭で過ごす時間は自然と増えます。

また、目隠しフェンスや植栽などで外からの視線をやわらかく遮ることで、大きな掃き出し窓の開放感が充分に発揮されます。

より快適性を高めるなら、テラス屋根や日除けを取り入れるのもおすすめです。
天候や日差しを気にせず過ごすことができて、庭の使い方はさらに広がることでしょう。
視覚的には、近くにある植栽と、その奥に見える景色の両方を意識すると、空間に奥行きが生まれます。

窓からはじめる庭のレイアウト、位置、高さ、用途から考える心地よい庭づくり

ウッドデッキの際、少し離れたところ、さらに奥、と点々と配置した植栽のレイアウトにより奥行きを感じさせるダイニング前の庭。

窓際のインドアグリーンも遠近感の演出に一役買っています。
ウッドデッキは室内のフローリングと色調や板の張り方向を合わせることでフロアが広く感じられます。

② 家事や仕事の時間を豊かなものにしてくれる、少しの緑

キッチンに立っている時間は、毎日の暮らしの中で意外と長いものです。
料理をしているときや洗い物をしているとき、腰窓やスリット窓から覗く1本の木の緑だけでも、葉の揺れや新緑、紅葉など十分に心を豊かにしてくれるのではないでしょうか。
キッチン以外にも、家事室や仕事部屋など、比較的長い時間を過ごす部屋の窓の外に見える緑は暮らしの中の小さな楽しみとなります。

庭といっても、家の全ての窓の前をリビング前のような凝ったものにする必要はありません。
庭づくりは、すべてを均一に仕上げることではなく、見える場所、使う場所にメリハリをつけることもまた大切です。

窓からはじめる庭のレイアウト、位置、高さ、用途から考える心地よい庭づくり

③ 景色を切りとるピクチャーウインドウ

玄関を開けて正面にあるFix窓、廊下や和室に設けられた地窓などは、建物の計画時にあらかじめ外の景色を楽しむことを主な目的として設けられることが多いのではないかと思います。
こういった窓から見る庭は、広範囲をつくり込むよりは、窓を額縁のように考え、見どころを絞って添景物、樹形や草姿の美しい植物などで視線を引き付ける印象的なシーンをつくるのがおすすめです。
その際重要になるのが、背景を整えることです。

絵のように美しくつくった庭も、背景が雑然とした状態ではその魅力は半減してしまいます。
スクリーンフェンスなどで背景を整えることで、植物の形など庭の美しさがより引き立つのです。
また、効果的に景色を切り取るためにはどこから見るのか、窓と視線の関係を確認しておく必要があります。
玄関を開けて見るなら玄関に立った時の目線の高さ、廊下の地窓なら立って見下ろす位置、同じ地窓でも和室の場合は畳に座って見ることが多いかもしれません。
可能なら図面だけで考えるのでなく、実際の見え方を確かめて検討するのが理想です。

窓からはじめる庭のレイアウト、位置、高さ、用途から考える心地よい庭づくり

④ 心安らぐ浴室前の庭

リラックスして過ごす浴室から庭を眺められる時間はとてもぜいたくなものです。
浴室から眺めるバスコートは、窓の位置や視線の高さを考えることが欠かせない場所です。

浴槽につかった状態では視線が低くなり、地面に植えた丈の低い下草や低木、景石などは、見えづらくなってしまいます。
そのため、目線の位置まで届く中~高木の緑を見せるか、植栽スペースを花壇のように少し高くするなど工夫が必要になります。
また、浴室はプライバシーへの配慮が特に重要な場所です。
道路や隣家の窓の位置などを確認し、しっかり視線を遮るために充分な高さと密度の目隠しを併せて計画しましょう。

そして、もうひとつ忘れてはいけないのが照明です。
浴室は外が暗くなってからの時間帯に使うことが多い場所ではないかと思います。
そのため、昼間の様子だけをイメージして庭をつくってしまうと夜には窓が鏡のようになって庭の景色はほとんど見えなくなってしまいます。
やわらかな光で壁や植栽を浮かび上がらせることで、昼とは違った庭の表情を楽しめます。

窓からはじめる庭のレイアウト、位置、高さ、用途から考える心地よい庭づくり

目線の高さに合わせて植栽スペースを高い位置に。

3.窓の内側の暮らしからイメージする

庭の要素をただ窓の中心に配置するのではなく、「この場所で過ごすとき、何が見えるだろう」と考えてみる。窓から庭を眺めるだけではなく、庭が毎日の暮らしの中にどのように入り込んでくるのかを想像しましょう。
そんな視点から庭づくりを始めることで、庭は単なる家の外の空間ではなく、室内で過ごす時間まで豊かにしてくれる存在になります。

まずは、住まいの窓をひとつずつ観察してみてください。
そして、その窓の前で、家族の誰がどのように過ごし、どんな景色を見たいのか、生活に合わせて庭の役割を考えてみましょう。
窓の向こうにある庭を考えることは、窓のこちら側にある暮らしを考えることでもあります。
その視点が、毎日を少し心地よくしてくれる庭づくりの第一歩になるのではないかと思います。

 

著者プロフィール

窓からはじめる庭のレイアウト、位置、高さ、用途から考える心地よい庭づくり

野中めぐみ 株式会社グリーンテリア
1級造園施工管理技士  福祉住環境コーディネーター2級

1級造園施工管理技士  福祉住環境コーディネーター2級 ハーブ園でガーデナーとして勤務したのち、E&Gアカデミーにて学びエクステリア業界へ。 エクステリア、ガーデンの専門店グリーンテリアに所属し主に設計を担当する他、植物に関するワークショップの開催など庭のある暮らしの楽しさを伝える活動も行う。 エクステリアプランナーとして様々な角度からみなさまの快適で豊かな暮らしにつながる情報をお届けいたします。

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